株式会社ブイキューブ代表取締役社長・間下直晃
「日本企業ならではの強みを意識しながら、アジアで戦う」

『海外で働こう~世界へ飛び出した日本のビジネスパーソン』より抜粋
西澤 亮一

私たちがアメリカに進出したことによって得られたものはもう一つあります。それは日本のベンチャー企業が、アメリカで戦う難しさを身をもって経験したことです。

日本とアメリカでは、ベンチャー企業の資金調達力がまったく違います。今の私たちの企業規模では、日本で調達できる金額はせいぜい10億円単位が限度。一方、アメリカの場合は、私たちと同じ規模の会社だったとしても、100億円レベルを調達することができます。仮に技術力は自分たちのほうが勝っていたとしても、資金調達力で数倍以上もの差をつけられたら勝ち目はありません。つまり、日本のベンチャー企業は、アメリカ企業に真っ向勝負を挑んでもかなわない。それなら私たちは、日本企業ならではの強みを活かせるフィールドで、その強みを存分に発揮してアメリカ企業に対抗していくしかない。「どこでどう戦っていくか」ということを考えるようになったのです。

アジアならではのコミュニケーション文化を取り入れたV-CUBE

私たちがアジアでの事業展開を開始したのは2009年のことです。最初に拠点を設けた国はマレーシア。理由は、東南アジアの中では経済が発展していて、なおかつ英語が通じやすい国だったからです。その当時は、英語が通じやすい国に展開するしかないと考えていました。しかし、事業展開を進めるうちに考えが変わってきました。

アメリカ企業の動きを見ると、英語圏の市場には着実に入り込んでいますが、非英語圏の国では苦戦をしています。そこを狙っていこうというのが私たちの戦略です。その点アジアは、インドネシア、タイ、ベトナム、中国、そして日本というように非英語圏の国、つまり、私たちが戦いやすい場所がたくさんあるのです。

また同じアジアですから、コミュニケーションに関する文化も日本と似ています。アメリカのビジネス界では、電話会議で重要事項を決めるのが当たり前です。つまり「言語=ロジック」で物事が進められている世界です。そのためテレビ会議などのビジュアルコミュニケーションツールも、電話会議の補助ツールとして発展してきました。

一方アジアでは、重要事項ほど当事者が直接顔を突き合わせて決めていきます。元々電話会議なんてあり得ない。つまりアジアでは「言語」だけでなく、同じ「時間」や「空間」を共有することを重視しているのです。そのため私たちの「V-CUBE」も、同じ時間や空間を共有している感覚に極力近づけることを目指して改良を重ねてきました。

顧客の要望に柔軟に対応できることも私たちの強みです。私たちのサービスには、お客様が必要なぶんだけを利用して月額で利用料を払う「クラウド型」と、お客様がシステムをまるごと購入して自社にサーバーを置く「オンプレミス型」があります。日本ではクラウド型を選択するお客様が主流となってきましたが、まだまだ東南アジアでは自分で所有したいというほうが多数です。また、購入したシステムを、自社向けにカスタマイズすることを求めてきます。当然私たちはその要望に対応しています。

一方アメリカの企業は、自分たちの製品やサービスがグローバル・スタンダードであると規定して、その基準を世界中のあらゆる国や地域に展開するスタイルを採ります。基本的にカスタマイズには応じようとしません。コストをかけずに、均質的な商品を大量に売ることで売上と利益をあげるという戦略だからです。

しかしアジアでは、アメリカ企業よりも私たちのスタイルのほうが圧倒的に受けは良いので、勝算は大いにあると踏んでいます。今ある調査会社によると、アジアのビジュアルコミュニケーション市場における当社のシェアは第2位で、1位はアメリカ企業です。現在はマレーシア、インドネシア、シンガポールなどの拠点で40〜50名の社員が働いていますが、これを今後5年間で100人から200人の規模に拡大し、アジアでのシェア1位を奪取したいと考えています。