現代新書50周年特別企画 村井実「講談社文化を背負って」

現代新書はこうして生まれた
村井 実

 ――『光源氏の一生』は今でも版を重ねています。でも、先生の本も10万部を超えているので、十分によく売れましたよ。最後に、50年もこのシリーズが続くと思いましたか?

村井 いやー、あのときの山本さんの首のかしげ方からすると、きっと難しいだろうなと思いましたよ(笑)。

 だから、最近も新聞に載っている現代新書の宣伝を見ては、「なかなか元気そうにやってるじゃないか」とうれしく思っていました。これからも「講談社文化」を背負うつもりで、がんばってください。       

「講談社現代新書」の刊行にあたって
 教養は万人が身をもって養い創造すべきものであって、一部の専門家の占有物として、ただ一方的に人々の手もとに配布され伝達されうるものではありません。
 しかし、不幸にしてわが国の現状では、教養の重要な養いとなるべき書物は、ほとんど講壇からの天下りや単なる解説に終始し、知識技術を真剣に希求する青少年・学生・一般民衆の根本的な疑問や興味は、けっして十分に答えられ、解きほぐされ、手引きされることがありません。万人の内奥から発した真正の教養への芽ばえが、こうして放置され、むなしく滅びさる運命にゆだねられているのです。
 このことは、中・高校だけで教育をおわる人々の成長をはばんでいるだけでなく、大学に進んだり、インテリと目されたりする人々の精神力の健康さえもむしばみ、わが国の文化の実質をまことに脆弱なものにしています。単なる博識以上の根強い思索力・判断力、および確かな技術にささえられた教養を必要とする日本の将来にとって、これは真剣に憂慮されなければならない事態であるといわなければなりません。
 わたしたちの「講談社現代新書」は、この事態の克服を意図して計画されたものです。これによってわたしたちは、講壇からの天下りでもなく、単なる解説書でもない、もっぱら万人の魂に生ずる初発的かつ根本的な問題をとらえ、掘り起こし、手引きし、しかも最新の知識への展望を万人に確立させる書物を、新しく世の中に送り出したいと念願しています。
 わたしたちは、創業以来民衆を対象とする啓蒙の仕事に専心してきた講談社にとって、これこそもっともふさわしい課題であり、伝統ある出版社としての義務でもあると考えているのです。
1964年4月 野間省一

       「講談社現代新書」50周年特別企画②「創刊前夜の日々」はこちら