「講談社現代新書」50周年特別企画①
村井 実「講談社文化を背負って」

村井 実
創刊時のラインナップ。

「教養は万人が身をもって養い創造すべきものであって、一部の専門家の占有物として、ただ一方的に人々の手もとに配布され伝達されうるものではありません」

 つまり、教養とは、民衆の一人ひとりが能動的につくり上げるものだということです。現代新書はそうした知的活動に役立つものであってほしい。それは講談社の出版の理念である「面白くてためになる」とも合致するものじゃないですか。

――いま「民衆」とおっしゃいましたが、「刊行のことば」の中でもこの言葉は使われていますね。

村井 そうです、これは「大衆」では駄目なんです。「民衆」というのは、「国家に対する民」「政府に対する民」です。もっとも「講談」というものはやっぱり娯楽ですよね。別に政府に対抗する気持ちがあったわけじゃない。だけど、「政府に対抗する」という建前をとると、講談社が相手にすべき民衆という像がくっきり浮かび上がってくる。そして、それが「講談社文化」じゃないかと思います。

――どういう書き手に頼むかも、先生がアドバイスなさったんですか?

村井 最初のころのラインナップは、ほとんど山本さんと私の二人で相談して決めました。山本さんは、一度やると決めたらとことん本気でやる人でした。執筆を引き受けた人たちも、山本さんの熱意と心意気にうたれたんだと思います。それから、私のように『少年倶楽部』を愛読していた世代がちょうど働き盛りになっていて、講談社の苦境を何とかしたいという思いでいた人も多かったんじゃないかな。依頼はほとんど断られなかったのではないでしょうか。

 最初に刊行された都留重人さんの『経済学はむずかしくない』(通巻番号1番)も池田弥三郎さんの『光源氏の一生』(2番)も、よく売れましたよね。私が書いた『人間の権利』(4番)はあんまり売れなかったんですけどね。