文/吉川尚宏
3月27日にヤフーがイー・アクセスの株式の99.68%、議決権比率では33.29%をソフトバンク株式会社から3,240億円で取得することを発表した。
ヤフーはイー・アクセスの議決権のないA種種類株式の100%(342,777株)を、また議決権のあるB種種類株式33.29%(549株)を保有し、トータルで99.68%の株式を保有することになる。
なお、イー・アクセスは6月1日に株式会社ウィルコムと合併するので、この買収価格はイー・アクセス分とウィルコム分の両方を含んでいる。
ヤフーによれば、「第四のキャリア」ではなく日本で最初の「インターネットキャリア」事業を目指すという。おそらく、通信サービスとコンテンツ、eコマース等の融合した、斬新なサービスを投入するのであろう。
料金体系についてもいわゆる月額のデータ通信料金がいくら、音声料金がいくら、といった料金体系だけでなく、コンテンツ料金に通信料金が内包されたような料金体系も導入するのかかもしれない。
消費者の観点からはこうしたイノベーションが起こることは望ましいことであるが、他方で、電気通信事業や電波割り当てに関する法制度的枠組みからみれば、四社存在するMNOの一社であることにかわりはない。
企業経営者が自社の企業価値向上の手段としてM&Aを活用することは当然のことであるが、今回のM&Aは電気通信事業分野の競争政策や電波政策に関する構造的課題を露呈することになった。
一つは電波という公的な無形資産の転売に関する問題、引いては電波オークションに関する問題、もう一つは企業グループと競争政策に関する問題である。