岩瀬大輔「人間関係はギブ&テイクからギブ×10へ」

最新刊『仕事でいちばん大切な 人を好きになる力』より

そこで僕は、人間関係についてひとつのルールを設けています。

それは、「人間関係をギブ&テイクで考えない」ということ。

もっと踏み込んでいうなら、いっさいの「テイク」を考えない。ひたすら「ギブ」に徹するのです。

本来、ビジネスとはギブ&テイクによって成り立っているものだと思います。そして双方の利害が一致して、互いに幸せになれる関係(いわゆる「win-winの関係」)も存在します。

しかし、ギブ&テイクの発想を友人関係にまで持ち込むのは本末転倒です。

われわれは、その人のことが「好き」だから親しく接するのであって、なにかを「テイク」するために仲良くしているのではありません。「ギブ」するにあたっても同様で、その人のことが「好き」だから「ギブ」するのであって、なにかを得るための交換条件として「ギブ」しているわけではないはずです。

そしてなにより、ギブ&テイクの意識を持ったまま誰かに接近しても、あなたの隠し持つ「テイクしたい」という気持ちはすぐさま見透かされます。きっと警戒され、敬遠され、深い関係が築けないまま終わるでしょう。誰だって一方的に「テイク」されるのは嫌なものです。

そこで出てくるのが、「ギブ&テイクからギブ×10へ」という発想の転換です。

相手からなにかを得ようなどとは考えず、ひたすら与えること。損得勘定を抜きにして、その人のために力を尽くすこと。知識も手間も人脈も、いっさい出し惜しみしないこと。これは、自己犠牲ではありません。気のいいお人好しになることでもありません。

見返り(ギブ&テイク)に縛られて物事を判断していると、いつも「ギブ」と「テイク」のバランスに頭を悩まされ、ストレスを抱えたままになります。「自分はこれだけ与えてやったのに、なにも返してもらっていない」と腹を立てたり、「これだけしてもらったのだから、早くなにかを返さなきゃ」と重荷に感じたりすることもあるでしょう。そんなことでは人間関係を損(ギブ)と得(テイク)だけで考えるようになり、神経を磨り減らしてしまいます。

一方、「ギブ」に徹した生き方は、なんらストレスになりません。

義理や駆け引き、打算に戦略といった発想に左右されず、純粋な「好き」だけを動機に動いていけるからです。さらに、こちらに露骨な「テイク」の意図がないことがわかれば、相手も警戒心を解いて付き合ってくれるでしょう。

与え続けることは「損」ではない

さて、ここで大きな疑問が浮上してきます。

「与えるばかりだったら、自分は損する一方じゃないか」
「みんなから利用されておしまいじゃないか」
「どこかで『テイク』しないと、なんのためにそんなことやってるのかわからないじゃないか」

といった意見です。

たしかに見返りを求めず、気前よく与えてばかりいるのですから、損しているように感じられる場面もあるでしょう。いくら損得勘定じゃないんだと自分に言い聞かせても、なかなか実践できることではないかもしれません。