岩瀬大輔「人間関係はギブ&テイクからギブ×10へ」

最新刊『仕事でいちばん大切な 人を好きになる力』より

こうした時代的背景に加え、自分自身の信念として、僕は自分の人脈を出し惜しむようなことはしないことにしています。

大好きな人を囲い込むのではなく、むしろ大好きな人だからこそ、積極的に他の友人たちにつなげていく。貴重な人脈を出し惜しみすることなく、助けを必要としている人にはどんどん紹介していく。人も情報も「隠さない」こと、そして自発的にシェアしていくことが、自分自身の信頼を築き、周囲の幸せをつくり上げていくのです。

きっとみなさんも、自分なりの人間関係や人脈をお持ちだと思います。

その中には、苦労して手に入れたツテもあるでしょうし、「あの人」へのアクセスをひとり占めしておきたい気持ちもあるでしょう。紹介すると損するような気持ちさえあるかもしれません。

しかし、その考えを改めることで、人脈を閉じていたときよりもずっと多くの幸せを得られるはずだ、というのが僕の考えです。

感謝リストがそうだったように、人脈もまた永遠に未完で、永遠に成長していくものだと考えてください。自分で勝手に塀をつくるのではなく、自分たちのネットワークに新しい人をどんどん招き入れましょう。そして自分だけでは解決できない課題があったら、積極的に「仲間」の力を借りて、目の前の人を助ける。学び合い、刺激し合い、助け合うことで、人間関係はより深く、濃くなっていくはずです。

ギブ&テイクではなく「ギブ×10」

自分の経験を振り返ってみると、人付き合いの中で愉快ではない気持ちになってしまうことが、わずかながらあります。

ひとつ目は、たまにしか連絡してこないのに、連絡があるときは必ず自分の利己的な目的(たとえば営利目的イベントへの登壇依頼など)、というパターン。1回くらいならお付き合いしますが、そればかりが続くようだと、さすがにゲンナリします。

もうひとつは、まだそれほど親しくない知人に人の紹介を頼んだところ「紹介してもいいですけど、私もいつか頼みごとをすると思いますので、そのときはよろしくね」と念を押されるパターン。正直、これも興醒めしてしまいます。

なぜ、こうした態度をとられると不愉快になってしまうのでしょう?

あるいは、他者にそうした思いをさせないためには、どうすればいいのでしょう?

たとえば、誰かが「友達になりたい」と歩み寄ってきた場面を想像してみてください。顔も名前も知らない人が、たっぷりのおべっかを使いながら「ぜひわたしと友達になりましょう」とすり寄ってくる。・・・おそらく、誰もが警戒心を抱くシーンだと思います。

警戒心の正体は、「利用されるんじゃないか?」という不安です。

自分と仲良くなることで、なにか利己的な目的を達成しようとしている。「わたし」という人間に興味があって近づいているのではなく、自分の持つリソース(権限や人脈など)がほしくて近づいてきている。そう察知したとき、人はすぐさま心を閉ざし、相手のことを遠ざけようとします。いわば防衛本能のようなものです。

これは非常に大きな問題で、もしかしたらあなたが誰かに近づこうとするときにも、同じような目で見られ、拒絶される可能性があることを意味しています。たとえあなたに利用するようなつもりがなかったとしても、です。