キヤノンが3月28日に株主総会を開いた。都内の本社で行われ、過去最多の2663人の株主が出席したという。総会では、元大阪高検検事長で弁護士の齊田國太郎氏と元国税庁長官で証券保管振替機構社長の加藤治彦氏を、同社初の社外取締役に選んだ。
キヤノンは社外取締役の導入に反対してきた最右翼の会社とみられてきた。会長兼社長の御手洗冨士夫氏も社外取締役不要論を語ってきた。経団連が社外取締役の義務付けに強く抵抗しているのも、会長を務めた御手洗氏への配慮があると見られてきた。
そのキヤノンが陥落したのである。
同社が社外取締役を置いて来なかったことに関して株主の関心も高かった。昨年の株主総会でもなぜ置かないのかという質問が出ていた。御手洗氏はさすがに「不要」とは切り捨てず、探しているが「十分な時間を割いていただける有能な人物が見つからない」という答えだったという。
そのキヤノンが社外から取締役を入れると発表して臨んだ総会だけに関心を呼んだのだろう。過去最多の出席者が集まった一因と考えられる。
1月末に社外取締役の導入方針を決めた際には「制度に反対しているわけではなく当社に必要が無かっただけ。適切な人材が見つかったのでお願いした」というキヤノンのコメントが日本経済新聞に載っていた。
さすがに株主総会で「見つかったから」と答えるのはマズイと思ったのだろう。日経によれば御手洗氏は「M&A(合併・買収)が増え法務面で対応の必要性が高まっている」と理由を説明したそうだ。
だが現実は、さすがのキヤノンも追い詰められたから、というのが本音に違いない。