[ボクシング]
杉浦大介「パッキャオ、“野生”を取り戻せるか」

~パッキャオvs.ブラッドリー再戦、直前展望~
スポーツコミュニケーションズ

不可解な判定負けがバネに

ファンと写真撮影するパッキャオ。世界的な人気は健在だ。

 この万能派にパッキャオが勝とうと思えば……本人が宣言している通り、かつてのようなギラギラした野性味をどうしても取り戻す必要があるのだろう。

「第1戦同様の慈悲深いマニーと対戦すると思っているのなら、ブラッドリーは驚くことだろう。調整は順調だよ。マニーはブラッドリーにダメージを与え、仕留めてしまわなければいけないと分かっている。第1戦はあまりに簡単過ぎて、6ラウンド以降のマニーは手を抜いてしまったんだ」
 パッキャオと固い絆で結ばれたフレディ・ローチトレーナーはそう語り、再戦で愛弟子が全盛期のような“デストロイヤー”スタイルに戻ると断言する。ただ、話は本当にそれほど簡単だろうか?

 過去19年間に渡ってプロボクサーであり続けてきたパッキャオは、35歳を迎えた現在までに62戦をこなし、11の階級にまたがって戦ってきた。
 その間に6階級を制覇し、エリック・モラレス、マルコ・アントニオ・バレラ、ファン・マヌエル・マルケス、オスカー・デラホーヤ、リッキー・ハットン、ミゲール・コット、アントニオ・マルガリート、シェーン・モズリーといったビッグネームと対戦。偉大なる軌跡はほとんど現実離れしており、フィリピンの英雄の名は世界中で永遠に語り継がれていくことは間違いない。

写真はコット戦直後のもの。この試合がピークだったのか……。

 しかし、そんな怪物からも、徐々に、少しずつ、勢いが感じられなくなっていった。現時点で最後のKO勝ちとなった2009年11月のコット戦以降は下り坂という人がいれば、その一戦前のハットン戦がピークだったという人もいる。実際に過去5勝はすべて判定であり、2012年は2戦2敗と厳しい1年だった。

 映画出演や音楽活動に加え、政治家としての活動まで始め、さまざまな意味でハングリー精神が減退しているのだろう。どんな凄いアスリートにも、肉体の衰えは必ず忍び寄る。2012年6月のブラッドリー戦での敗北は不当な判定の結果だったとしても、パッキャオがキャリアの晩年に差しかかっていることはもう誰も否定できない事実である。

 そんな黄昏の時期に対戦する相手として、ブラッドリーはパッキャオの闘争心を引き出すには最適の存在であるのかもしれない。前回はほぼ一方的に試合を支配しながら、納得のいかない判定で15連勝をストップさせられた。2年越しのリベンジを胸に、ファイトに向けての準備には力が入っているはず。ハリマオ戦で野生味が蘇った「あしたのジョー」の矢吹丈のように、ここでパッキャオが以前の迫力を一時的に取り戻しても驚くべきではない。

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