「講座:ビジネスに役立つ世界経済」
【第40回】 「経常収支赤字」は悪なのか?

「双子の赤字」が国力を大きく低下させるのか
このところ、大手マスコミを中心に、日本の経常収支赤字を「国力の低下」の証として悲観的にとらえる傾向が高まっている。
もっとも、日本の経常収支は必ずしも赤字が恒常化している訳ではない。最近の季節調整済みの経常収支を見ると、昨年11月に1,068億円、今年1月に5,883億円の赤字をそれぞれ記録したが、それ以外はほぼ一貫して黒字で推移している。
1月の経常収支赤字も旧正月要因による輸出の一時的な急減が招いたものなので、2月は大幅に改善することが期待される。2013年度が通年で経常赤字になる可能性は低いだろう。
ところで、経常収支赤字が忌み嫌われるのは、財政収支赤字との「双子の赤字」が国力を大きく低下させるという考えが強いためである。これは、1980年~90年代にかけての米国経済が双子の赤字を拡大させる中、国力が大きく低下し、「覇権国」の地位を失いかけたとの印象が強いためであろう。
だが、1990年代半ば以降、特にクリントン政権以降、「米国の国力低下」という話は一部の反米主義者を除けば聞こえなくなった。だが、その間も米国の双子の赤字は続いていた。特に、2005年~2008年までのいわゆる「ゴルディロックス・エコノミー」の局面では、米国の経常収支赤字の対GDP比率は史上最高の7%近い水準にまで上昇した。
しかし、この間、米国経済が深刻な低迷局面にあったという話は聞かない。むしろ、「ブレトンウッズⅡ論」に代表されるように、米国のグローバル経済における覇権が回復したという見方が優勢であった。
