理系東大生、大手企業の内定を辞退し、起業を選択! 志を育む学生生活とは
就活という規格におさまらない学生たちの革命前夜
いよいよ、2014年も4月がやってくる。就職活動も面接シーズンを迎え、ここからが本番だ。
ぼくにはその前に、どうしても会っておきたい人物がいた。
日本政治報道株式会社代表の鈴木邦和さんだ。
東京大学工学部に通う、現役の大学生でもある。
かれは、「有権者と政治家との間のディスコミュニケーションをなくしたい」という想いから起業し、「日本政治.com」というメディアを運営している友人だ。
「日本政治.com」は、質問に答えていくと自分の政治的主張に近い政党を見つけられる「投票マッチング」、国会議員や候補者の経歴や政策が一目でわかる「議員データベース」ほか、ウェブの特質を活かした画期的な機能を備え、2012年の衆院選挙の際には100万人以上の有権者が利用している国内有数の政治サイトだ。
鈴木さんとはこれまでなんども一緒に仕事をした仲だったが、起業の経緯については「自分の志のために大手企業の内定を複数辞退したこと」しか知らなかった。
なぜ、大企業への合格切符を持ちながら、起業というリスクを選べたのだろう。そして、そんなリスクをとってしまうほどに熱い彼の想いは、どこから来るのだろう。にわかには想像しがたい。
ぼくは自分の就活面接前に、その答えを知っておきたいと思った。フリー編集者としての自分と、企業に入ろうとする自分とのジレンマに悩んでいるぼくにとって、鈴木さんが出した答えは必ず参考になるだろうから。
というわけで、起業に至った志がいかに芽ばえたのか。まずはそこを語ってもらうことにした。すると驚くことに、起業プランを具体化できたのは、就職活動中の出来事だったという。
挫折、目標を見失ったキャンパスライフ
---そもそも、起業する前から政治活動には興味があったんですか?

「いやいや、ぼく、元々理系で工学部に所属していましたし、東大を目指したのも、大学界最強と言われている東大将棋部に入りたかったからなんです。起業しようと思うまで、政治は素人同然でした」
鈴木さんは、高校時代には県代表として全国大会に3度出場したほど将棋に打ち込んでいた。しかし大学では伸び悩み、挫折。将棋をやりたいがために入った大学で、かれは目標を見失う。
「なんのために自分が大学に入ったのか、よく分からなくなってしまったんです。一時は大学を辞めることも本気で考えていました」
ぼくから言わせれば、具体的なビジョンを持って大学にいるほうが珍しい。挫折したのならなおさら、遊んでしまってもおかしくないところだ。だが、そこで鈴木さんに転機がおとずれた。東大の同窓会活動に参加し、多くの社会人との接点ができたのだ。
「大学が主催する、卒業生と学生との交流プロジェクトの運営を2年ほど続けました。300人くらいの社会人の方々とお会いしたのかな。いろいろ面白い生き方をしている人達を見て、なんとなく自分がこういう生き方をしたいとか、これは違う、っていうことを少しずつ考えるようになったんです」
その後、鈴木さんは、おおかたの理系学生が歩む「大学院」という選択肢と、同窓会活動の中で親しくなったベンチャー企業への就職、あるいは留学などをぼんやりと見据えながら毎日を過ごしていた。
