[裏方NAVI]
広瀬勇人(スキーブーツチューンナッパー)<後編>「パラリンピアン小池岳太への期待」

スポーツコミュニケーションズ

 “未熟さ”ゆえの可能性

白い部分がテープを貼り、角度をつけた箇所

 今シーズン、ソチパラリンピックに臨むにあたり、小池はブーツにある工夫を凝らしていた。小池は、左ヒザが内側に入り気味になっていた。これではスキー板に正確に身体の動きを伝えることはできない。そこで左足のブーツの裏の内側部分にテープを貼って角度をつけ(写真)、ヒザが真っすぐ前に入るようにしたのだ。さらにテープを何枚貼るかにもこだわった。最もバランスよくポジションがとることのできる角度を求めると同時に、パラリンピックのレギュレーションも考慮しなければならなかったからだ。

 このブーツの裏面にテープを貼る調整方法は、広瀬が小池にアドバイスしたものだった。広瀬は小池のみならず、他の選手にも同じ調整方法を伝えている。だが、実際にやる選手は小池とごくわずかな選手だけだった。
「こちらとしては完璧にチューンナップはしているつもりですが、それでも実際に滑った時の微妙な感覚というのは選手にしかわからないですよね。ですから、本当は選手自身で調整できるといいのですが、やっぱり自分でいじってバランスが悪くなるのが怖いんでしょうね。実際にやる選手はほとんどいません。でも、岳太は自分からトライした。そのことにも彼の成長を感じましたし、これもまた、ひとつの才能だなと思いましたね」

 広瀬は小池のことを“少年”だと思っている。未熟さと、だからこその無限の可能性を感じるからだ。
「正直、世界を目指すのなら、これくらいはやっておかなければいけない、ということはまだまだ岳太にはあるんです。でも、彼は非常に素直なので、言えば言うほど、どんどん吸収して自分の力にしていく。まるで成長期の少年のようなんです。僕は会うたびに、彼に変化を感じる。だからこそ、まだまだ伸びていくだろうなと期待しているんです」

 既に小池は、広瀬に2018年の平昌パラリンピックも目指すことを宣言している。
「Koike Gakuta」
 表彰式でその名が呼ばれる日が来ることを、広瀬は楽しみにしている。

(おわり)

広瀬勇人(ひろせ・はやと)
1970年7月13日、北海道生まれ。小学4年からスキーを始め、高校、大学ではスキー部に所属。大学卒業後、プロスキーヤー、コーチとして活動する傍ら、スキーブーツのチューンナップを手掛けてきた。代表を務めるオーダーインソール工房「ハッチェリー」では、ウォーキングから野球、サッカー、ゴルフ、バドミントンなど、一般からアスリートまで幅広いニーズに応えている。

(文・写真/斎藤寿子)

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