たくさんの人に、もっと気軽にクラシック音楽に触れてもらいたい。そんな想いでスタートした「トヨタコミュニティコンサート」は2014年に33年目を迎えた。音楽を介して、全国に届ける「希望」とは?
本番まであと2時間——。張りつめた空気のなか、通し稽古が佳境に入る。
舞台の中心にいるのは曽我大介さん(48歳)。世界各地のオーケストラで客演を重ねる日本屈指の指揮者だ。
「皆さん、一生懸命合わせようとして、フレーズの呼吸を忘れていませんか?」
ひと呼吸置いて、
「でも大丈夫。皆さんが奏でる音色の調和、この短期間ですごく良くなりました。心に伝わります。最後、もう一回やりましょう。今までの練習を“棒に振らない"ためにも!」
曽我氏のこんな冗談を受け、楽団員たちから笑顔が漏れた。