「笑顔のために。期待を超えて——」こんなスローガンを掲げるトヨタの社会貢献活動の中には、ドライバーの意識改革も含まれる。これから生まれてくる子どもたちには、安全な社会の中で育ってほしい——。トヨタが想う「希望」のひとつのカタチが"霊峰・富士の麓"にあった。
「次の講習は高速フルブレーキング。時速100kmまで加速したら、一気にブレーキペダルを踏みこみましょう」
車内にはひとり。指導官の無線による指示を聞き、ペダルに足を置く。しかし躊躇してしまい、思いきって踏みこめない。すると、無線ごしにこんなひと言。
「最初は怖くて当然。もう一度、挑戦してみましょう」
覚悟を決めた2度目、結果は驚くべきものだった。
ここは富士の麓、「トヨタ交通安全センターモビリタ」(静岡県小山町)。スリップしやすい路面状態を再現した「低ミュー路」等、"危険を安全に体験する"走路を整備したドライビングスクールだ。
指導官は神野利夫さん(59歳)。30年以上に亘り、テストドライバーを養成してきた、トヨタの社員なら誰もが知る人物だ。
「今日は、人や車の限界を体験します。せっかくですから、事故も体験しましょう!」
実技講習の前、こう言われた真意は、雪道を想定したスリップ走行や、酒酔いゴーグルを装着しての疑似飲酒運転など、実際に危険な状況を体験すると理解できた。「モビリタ」に来れば、日常では経験できない車の"限界"を体感できるのだ。