先頃、『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』を上梓した僧侶の池口龍法さんは、京都大学、同大学院で学び、浄土宗総本山の知恩院に奉職しながら、宗派を超えた僧侶たちのフリーペーパーを創刊した、僧侶界のイノベーターだ。
全国の寺を廻り、僧侶たちを取材し続ける池口龍法さんが観て感じた、震災前後のお寺のありかたの変貌は? 「葬式不要論」が出る一方で、仏教&仏像ブームも起こる今、仏教というビジネスモデルの可能性はどこにあるのか?――僧侶たちが抱える苦悩と挑戦を、若き変革者が本音で綴る。
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よく、何がこれまでつらかったかということも、たびたび聞かれます。
いちばん最初につらかったのは、周りのお坊さんに声をかけて説明しても、誰もフリーペーパーを発行する意義をわかってくれなかったことです。むしろ、やめておいたほうがいい、どうせ続かないよという声が強かった。そんなことをするよりも、お経を読む勉強をしたほうがいいというのが圧倒的でした。
創刊号はお坊さん5人が表紙をかざっていますが、実際に親身になって協力してくれたのは、表紙のお坊さんたちではなくフリーライター1人だけでした。そのフリーライターも団体を立ち上げて2か月ぐらいたったら、大阪には仕事がないからといって東京に引っ越していってしまったので、一時期は本当にひとりでやっていました。
お金もいつそこを尽きるかと気が気じゃなかったです。最初のころは毎日お金の計算をしていたように思います。お金の計算はこの4年間で本当に早くなりました。フリーペーパーを出すたびに印刷費で10万円も20万円も減っていくので、それをどう捻出するか。もし、1年ぐらいたって運営の目途が立たなければ、そのときは撤退しようと考えていました。
どんないい活動も時機が合わなければ、認めてもらえないし、広がりを見せません。だから、社会の反応は真摯に受け止めるつもりでしたが、幸い時代のニーズに合ったようで、それに続けていく努力も認めてくれたこともあって、ここまで来れたんだと思います。
2013年末には、観光庁などが後援する「日本フリーペーパー大賞2013」で、大賞に次ぐ特別賞を受賞するまでになりました。つらかった初期のころに応援してくれた人にはいまでも頭があがりません。
他にスタッフをどうマネージメントするか。ボランティアで協力してもらっているので、負荷がかかりすぎないように調整しないといけませんし、利害調整もやっぱりあります。その苦労もつらかったですけれど、いまは軌道に乗って、喜んで協力してくれるようになり、コンスタントに発行できるようになってきたわけです。