大特集みんな悩んでいる「老いた親」の捨て方【第1部】決断ひとつで、天と地ほどの差がついてしまう!親を捨てるか妻から捨てられる

週刊現代 プロフィール

改築費用は全部で1000万円。区からの補助金や両親の貯金はあったが、それでも700万円の出費になった。退職金などの預貯金が1200万円あるが、そこから全額出すと、蓄えがほとんどなくなってしまう。末っ子は大学生で、学費や仕送りがあと2年は続く。やむなくローンを組んで改築費用を賄ったが、62歳という年齢のため、長期のローンは組めない。そのため月々の支払額が大きく、再就職するしかないのだが、就職先はまだ見つからない。

「妻とは本当に仲のよい夫婦でした。退職したら世界一周旅行に行く約束もしていた。でも、もう懐に余裕はなく、叶わぬ夢となりました。あれ以来、夫婦関係は急速に冷えています。『ここまできたらお義父さんは最期まで面倒を見るけど、お義母さんは絶対にイヤ。お義母さんをとるか私をとるか、きちんと答えを出して。場合によっては離婚です』、妻からこうつきつけられています。いったいどうしたらいいのか、絶望的な気分です」

どんなにおしどり夫婦でも、老老介護への不安や莫大な介護費用の問題を、円満に乗り越えることは難しい。社会福祉の専門家で淑徳大学教授の結城康博氏が語る。

「介護は、病気と違って終わりが見えません。だから、『できる範囲で』が原則なんです。それなのに、親だからという情に流されて無理をすると、『介護離婚』を引き起こしてしまうんです。またそれだけでなく、心が煮詰まってくると親を虐待してしまったり、自分がうつ病になるという危険性も孕んでいます」

自分を育ててくれた親への感謝の気持ちは大切だ。だが、子供にも子供の人生がある。一生懸命働き、ようやく定年を迎えた後、親のために自分と妻や家族を犠牲にすることが、果たして幸せと言えるのだろうか。

親の説得、良心の呵責、親族や世間の冷たい目—。

親を捨てるという「非常識」の前に立ちふさがる障害は多い。この前代未聞の状況の中、我々はいかに身を処していけばよいのだろうか。

「週刊現代」2014年3月22日号より