大特集みんな悩んでいる「老いた親」の捨て方【第1部】決断ひとつで、天と地ほどの差がついてしまう!親を捨てるか妻から捨てられる

週刊現代 プロフィール

「『気に入ったので、このままここで暮らしたい』と言ったんです。私の思惑通りになりました。最初から温泉好きの両親のために、そこを終の棲家にしてあげようと思っていたんです。『別居しよう』というと身構えられてしまうので、あえて嘘をつきました。それに、これ以上同居期間が長くなると親子の情に流されて、離れられなくなってしまうと思ったからです。

この結果に、妻もほっとした表情を浮かべていました。親を騙して妻をとったようなものですが、これで良かったと思っています。両親も、都会の小さな家にいた時よりいきいきしていますし、父は『俺と母さんのことは気にするな。自分たちの面倒は、死ぬまで自分たちで見るから』と言ってくれたんです。それを聞いて、重荷が下りたように心が軽くなりました」

答えは明白です

前出のやました氏は、親を捨てた木下夫妻の決断を「正解だ」と話す。

「老親の世話や介護というのは、突き詰めれば『親をとるか、妻をとるか』という究極の選択でもあります。あらかじめ自分自身がどちらをとるべきか考えておいたほうがいいでしょう。いざ、という時になると判断が鈍ってしまうものです。

そしてもし夫が妻ではなく親を選んだ場合、妻にとって夫婦関係を続けていく理由はなくなります。だから、夫は捨てられてしまうのです。定年後の人生を誰と歩むかを考えれば、どちらをとるべきか、答えは明白ではないでしょうか」

深く考えず、子供が親の面倒を見るのは当たり前、妻が介護するのは当たり前、と思考停止に陥った時点で、すでにその夫婦関係にはほころびが生じているのだ。

老前整理コンサルタントの坂岡洋子氏も、同様の意見を述べる。

「自分が現役のときは、親の介護は妻に任せきりという人も少なくないでしょう。でも、60歳で定年退職したら、『現役時代と同じ』では通用しません。夫も介護という未知の世界に飛び込まなければならないのです。そのとき、夫がどういう姿勢をとるか、あるいはどのような選択をするかで、その後の夫婦の人生は天と地ほど違ってくるのです」

老親の世話を巡る夫婦間の争点には、前述のように妻側の肉体的・精神的負担があるが、もう一つ忘れてはいけない問題がある。それが、「カネ」だ。

小菅恒さん(62歳/仮名)は、脳梗塞で倒れた父親(87歳)のために、自宅を車椅子で動ける家にリフォームした。

「両親と同居する際、介護が必要になったら施設に入れるからと約束して、妻を説得したんです。だから当然、妻は改築に大反対しました。でも、母が『そんな親を捨てるようなマネ、絶対に許さない』と、父を施設に入れることを拒んだ。そんな母の言い分を盾に、同居続行と改築を強行しました。妻からは『マザコン』『裏切り者』とののしられましたが、押し切るしかなかったのです」