財務官僚が狙っている所得税「改悪」

政府が所得税改革の検討を始めるという。具体的には、(1)「個人課税」から「世帯課税」への移行、(2)配偶者控除の廃止・縮小の二本柱とされるが、この改革の方向は正しいだろうか。

まず世界の状況からみておこう。

税制の比較が容易なOECD(経済協力開発機構)の主要24ヵ国において、「個人課税」は日本をはじめとしてイギリス、カナダ、スウェーデン、オランダなど15ヵ国。「個人・世帯選択」はアメリカ、ドイツなど5ヵ国、「世帯課税」はフランス、ルクセンブルクなど4ヵ国となっている。

'70年代以降の制度移行の状況を見ると、「世帯課税」から「個人課税」へは9ヵ国、「世帯課税」から「選択」へは2ヵ国、「選択」から「世帯課税」へは1ヵ国となっており、「世帯課税」から「個人課税」へというのが世界の趨勢になっている。

その理由は、「個人課税」のほうが課税の中立性があるからだ。たとえば専業主婦が働こうとすると、「世帯課税」では累進税率が効いて不利になるが、「個人課税」では中立的。結婚についても、フランス式の「世帯課税」は有利(結婚ボーナス)に働くが、「個人課税」では中立的となる。

経済政策としては、税制ですべてに対応するのではなく、ほかの政策で対応し、税制はできるだけ中立性をもたせるのが「常識」だ。仮に税制対応するときも、各種控除で対応するほうが簡素になるので望ましい。

こうした理由から、個人課税が基本で、必要な時には控除措置で対応するのが世界の常識になっている。つまり、今回の政府案はこうした世界の「常識」にまったく反している。
今回の日本の「改革」は女性の社会進出を促進させることが一つの狙いとされている。しかし、本当にそれを実現させたいのであれば、政府方針と逆に、(1)所得税の基本は中立的である「個人課税」のまま、(2)配偶者控除を拡充すればいい。配偶者控除の拡充で多少は税収が落ちるが、女性に働いてもらってその所得に課税して税収を増やすという、「損して得取れ」方式で対応すればいいからである。

それなのに、目先のことしか考えられない財務官僚は、とにかく配偶者控除をなくして増税したい一心である。それだけでは増税がミエミエなので、世帯課税にして少しばかりの減税を大きく見せたい。

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