館淳一 第2回 「微分積分の壁を乗り越えられていたら、シマジとは出会わずに真っ当な人生を歩んでいたかもしれない」

島地 勝彦 プロフィール

立木 息子のように可愛がられているシマジが「こいつはおれの親友です」といったら、シバレンさんは相好をくずされただろう。

シマジ 広谷が偉いのは翌日おれと一緒に神保町の古本屋に行って「柴田錬三郎全集」を買い、おれにどこから読めばいいか訊いたんだよ。おれは『赤い影法師』だろうね、と即答した。

 『眠狂四郎シリーズ』ではなく『赤い影法師』っていうところが通好みでいいね。

シマジ それから一月もしないうちに広谷はシバレンファンになり、約1年でシバレン全集を読破していたよ。

セオ やっぱりむかしの編集者は偉いですね。いちいち凄味があります。

シマジ 『PLAYBOY』創刊のとき広谷は世紀のスクープをやっているんだよ。

セオ 何ですか?

シマジ よしのぶちゃん事件で有名だった刑事、平塚八兵衛のPLAYBOYインタビューをやったんだ。これは大評判になった。あれは広谷の仕事の真骨頂だったね。

立木 おれもそれは読んだ記憶がある。長いけどすげえ面白いインタビューだったよね。

 平塚八兵衛を落としたのは広谷の男臭さだったんじゃないですかね。怖い刑事の懐に入って信賴してもらうなんてことは、シマジやおれには出来ないですよ。

セオ シマジさんが変化球を得意とすれば、広谷さんは剛速球を得意とする編集者だった、というわけですね。

 若かりしころのシマジがアメリカ在住の女に狂って、おれはすべてを捨ててアメリカに行くぞ、とわれわれに告白したときも、体を張って命がけで阻止したのは広谷です。シバレンさんや今東光さんにその旨を伝えて助けを求めたんですよ。

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