声に出して言いにくい「日本の大問題」第4回 隣のストーカー「被害者にも問題がある」という大衆の心理について考える

越智啓太×栗原加代美
週刊現代 プロフィール

しかしその自尊心は、本当は自分に自信がないことの裏返しなんです。見栄を張って嘘をつき、自分を少しでもよく見せようとしている。三鷹の事件の犯人も、有名大学の学生だと身分を偽っていました。フェイスブックで二人は知り合ったわけですが、ネット上ではプロフィールを偽ることも簡単です。

栗原 犯人にしてみれば彼女は、これまでの自分の人生にはいない「勲章」のような存在になった。美しくて、性格も良い、女優の卵。自分にとっては宝石のような彼女を逃したくない一心で、嘘を嘘で塗り固めていったのでしょう。

越智 まさしく、唯一無二の勲章を「手に入れて」しまった。しかし、付き合っていく中で、だんだんボロが出てきます。そして、犯人の本性に気づいた女性が離れていく。ストーカーは自尊心が傷つけられて、自分のすべてが否定されたような気になってしまい、復讐の行動へと変化していく。「拒絶型」と呼ばれる、もっとも危険なストーカーのタイプです。ストーカーには、「相手が自分を愛している」と妄想をするタイプや、人の心がわからない、共感能力の足らないタイプなど様々なタイプがあります。

栗原 私のところへ来る相談者のほとんど全員について、共感能力に乏しいと感じます。

私は、ストーカー行為はDVと同根の問題だと思っています。元交際相手につきまとうストーカーの多くは、交際中に暴力を振るっています。そのために女性が離れていくケースも多いのですが、一緒にいる場合は身体的な暴力、距離が離れた場合はストーカー行為による精神的な暴力を振るうわけです。

「スマホで一日中、行動監視」

越智 交際中に、支配的な行動をとるのも特徴です。「いまどこで何をしているのか報告しろ」「異性と話をしているときは、電話をつないで話している内容を中継しろ」といった無理な要求も、いまはスマホ、LINEを使って24時間、リアルタイムで可能になったので、相手を常に拘束してしまう。

栗原 石川さゆりの『天城越え』に「誰かに盗られるくらいなら、あなたを殺していいですか」という歌詞がありますね。この歌詞は、ストーカーの心理をとてもよく表しています。このタイプの人は「交際相手が他の人のものになってしまう」と考えただけで居ても立ってもいられなくなってしまうのでしょう。だから、「いっそ殺してしまえば、永久に自分のものになる」と、自らの支配欲、所有欲を満たすために殺人まで犯してしまう。

越智 殺人事件まで至ってしまうストーカーには、二つのタイプがあります。一つは、『天城越え』のように相手が自分の生活のすべてになってしまっている人。相手を「愛すること」が自分を支えているから、「裏切られた」と感じると、それが自分の死だと考え、無理心中を選んでしまうのです。

栗原 館林の事件でも、容疑者は自殺していますね。'12年に神奈川県逗子市で起きた事件でも、元交際相手の女性を刺殺したとされる容疑者は、首吊り自殺をしています。

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