「アメちゃんあげよか」—大阪のおばちゃんの決めゼリフである。袖振り合うどころか、目が合っただけで縁を感じて親切にする。そして底抜けに明るい。彼女らこそが日本を救う!かもしれない。
パリ、シャンゼリゼ通りのルイ・ヴィトン本店。ときおり、恋人たちの囁きあう声が聞こえるほど、店内ではゆるやかに、静かな時が流れていた。
彼女たちが来るまでは。
「ここや、ここや。ほれ、ここにビトンて書いてあるわ」
「よう見たら、ビートンやったりしてな!」
「なんでパリまできて、パチモン(ニセモノ)買わなアカンの」
眉をひそめるマドモアゼルたち。と、亀井静香似の婦人がバッグを指さし、店員に手招きする。
「お姉ちゃん、コレ、いくら?」
もちろん日本語。というか関西弁。それでも何とか英語で会話を試みるフランス人店員。