昔「満州」、いま「原発」「日本の生命線」なんてウソばかり 日本人よ、歴史に学ぼう 保阪正康×磯田道史

週刊現代 プロフィール

磯田 最近の政治的話題でいうと、多色すぎて絵が理解されなかった細川護熙さん、単色が心配される安倍さん。そういう感じがします。

保阪 都知事選の立候補者だった田母神俊雄氏なんかは、単色というよりもっと単純な色の単色ですよ。

磯田 愛国心は彩り多いものにしてほしい。この頃は文化教養をすっ飛ばして、なんだか金切り声でサッカー試合でも応援するような愛国心ばかりです。

保阪 そうですね。そして単色の愛国心が流行るときというのは、相手を罵るときに「売国奴」とかの言葉を使いがちなんですよ。

磯田 自分と意見の違う人を外国人になぞらえて蔑んでみたり。戦後日本の教育では「こんな日本が好き」が抜け落ちすぎていたのは確かですが、了見の狭い単色の愛国教育だけはけっして行ってはいけない。必ず妙なことになって日本の良さが失われるでしょう。

保阪 私達の先達である明治の日本人は、為政者でも軍人でも絶妙なバランス感覚を持って幕末の動乱と、日清・日露戦争を生き抜いたリアリストたちだったのにね。

本当の「生命線」は国民の知力

磯田 伊藤博文や大久保利通、西園寺公望といった元老たちはしたたかでした。最初は尊皇攘夷を唱えながら、これはスローガンにすぎなかったからとあっさり軌道修正して明治維新を成し遂げた。

保阪 だけど、やっぱり日本人は、情念的には明治の元勲より、新撰組に襲撃されたときに、同志とともに闘って倒れた志士が好きなんですよね。日露戦争の講和後、バランス感覚を知らない民衆にあおられ、為政者も軍部も世代交代しているうちに、日本はどんどんおかしくなっていった。

磯田 現在、東アジア諸国は、国民国家の形成を始めてから60~70年しか経っていません。中国でも朝鮮半島でも民族主義は高まるばかりです。

その現状を踏まえたうえで、日本人が戦前のような古い感覚に戻ってしまうのならば、中国や韓国と同レベルになってしまいます。識字率と生活レベルがようやく上がって、若者たちが他国を非難するのに躍起になっている国と同じことをしてはいけません。一度民族熱にうかされて失敗した経験のある「先進」日本のほうから彼らに何かを語りかけるべきです。

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