昔「満州」、いま「原発」「日本の生命線」なんてウソばかり 日本人よ、歴史に学ぼう 保阪正康×磯田道史

週刊現代 プロフィール

保阪 どれぐらいの形勢になったら戦争を継続できなくなるかという目測力=撤退する力とは、ある意味、本能的なものですからね。軍人が官僚化した瞬間に、危機の目測力というものは、まったく失われるんですよ。官僚は知識階級の中で「勉強、勉強」で評価されて現場に来ているから、勘働きなんていうのはむしろどんどん阻害されていく。

磯田 そうした歴史の教訓を踏まえて、私たちは、ただの願望が事実化されていないか、計画が破綻して現実と乖離し、こちらが主導権を失った状態になっていないか、しっかり判断しなければいけない。事前の目算が大きく狂ってしまった時は、これまでの行きがかりにこだわって傷をひろげそうになっていないか、見極めが必要です。

日本の原発計画は残念ながら事前の思惑からはずれてしまった。歴史の教訓からすると、こうなった以上、もう願望と現実を分別し、後世に恥じぬ処置をとるのが常識ですが……。今の政・官・業にその賢さはまだ残っていますかね。

保阪 さて、どうでしょうかね。いま私が危惧しているのは、様々な問題について政治家が国民に否か応かで判断を迫る傾向にあることなんです。二極化したスローガンばかりというのかな。原発がなければ電力がまかなえない、という主張も、それに似ているのではないかと思う。

こんなことをいうのは忍びないですが、いまの一部の代議士のレベルはひどすぎますよ。歴史なんて全然学んでない。それと、歴史認識を完全に自分の情念の憂さ晴らしにしていますね。歴史上の出来事を教訓化するとか、得た知識を糧として、そこで自分だったらどういうふうに判断するかと鍛錬すべきなのに、簡単な気持ちの問題で割り切って歴史を見ている。

磯田 僕は安倍晋三さんの抱く愛国心というものは、近年の政治家にはないものがあり、一面では尊敬もしています。ですが、彼はある種独特な日本信仰を持った人間。こだわりが強すぎるタイプで、時折、とくに相手のある外交面では危うさを感じる。

保阪 あの人の愛国心というのは、「単色」というか。

磯田 単色でない愛国心というのは、偉大なる政治家には必須の資質です。第二次大戦時の英国のチャーチル首相とかは典型的な単色でない愛国心の持ち主でしょう。厚みのある文化教養を身につけていない人間が、権力の座を与えられると、単色の愛国心を持ちやすくなります。

保阪 軍人はその典型ですよ。戦前には単色の濃淡の差だけで、自分の考えとは違うと言って、殺し合いをしていたんですからね。

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