二宮寿朗「W杯、懸念されるスタジアム問題」

二宮 寿朗 プロフィール

“祭りのあと”の重要性

 スタジアム建設にはブラジルの国内クラブも貸金面で関わっている。だが、大幅に関わっているのはサンパウロのコリンチャンスなど、限られたクラブのみだという。このサンパウロのイタケロンスタジアム開発に併せて市街地整備も進められているそうだ。ブラジルW杯後、コリンチャンスがこの6万5000人収容の新スタジアムを利用して、にぎわいを見せていくことは想像できる。

 しかし、コリンチャンスのようにうまく活用できるクラブがあとどれほどあるのだろうか。昨秋には、12会場の一つ、マナウスのアマゾニアスタジアムがW杯後、囚人の収容所に使うプランがあるというニュースが流れた。マナウスには有力なサッカークラブがないため、公的利用のプランを模索しているのだという。建設費に日本円で270億円ほどかかっているそうだが、現在も建設中でさらに金額がかさむ可能性はある。国立スタジアムの工費に600億円ほどかかったとされるブラジリアも同様の問題を抱えている。

 筆者は昨年6月、コンフェデレーションズカップのスペイン―ウルグアイ戦、日本―イタリア戦の取材でレシフェのスタジアム、ベルナンブーコを訪れた。市街地から車で1時間近くかかる内陸の奥地で周りはスタジアム以外、何もない。道路は一車線で渋滞し、かといって近くに駅があるわけでもない。

 レシフェには横浜F・マリノスの“奇跡の40歳”ドゥトラが所属したスポルチ・レシフェなど4つのクラブがあるというが、果たしてどのクラブがベルナンブーコを「受け継ぐ」というのだろうか。スタジアム周辺が整備されていかない限り、このスタジアムに人を呼ぶのはなかなか容易なことではないと思えた。

 あやふやな計画がスタジアム建設遅れの事態を招いた一要因であることは間違いはない。そして収容所プランやレシフェの例を引き合いに出しても、「W杯後」の青写真をしっかり描けているとも思えない。

 ブラジル代表が母国で輝けば、熱狂を呼び、人々の喜びとなる。大会を成功させることができれば当然、経済効果も出てくるだろう。多少なりとも国が潤うことは期待できる。しかしながら、これだけ莫大なカネをかけたスタジアムを2次利用できなければ、いずれは国民に負担となってのしかかる。サッカーそのものに影を落とすことにもなりかねない。そして16年のリオ五輪にも何らかの影響が出てくるかもしれない。

 建設を急ぎ、W杯を成功させるのはもちろんだが、祭りのあとをどうするか――。
 そしてあやふやな計画のツケを一体、誰が払うのか。それがサッカーをこよなく愛するブラジル国民であってはならない。