二宮寿朗「W杯、懸念されるスタジアム問題」

二宮 寿朗 プロフィール

W杯はひとつのチャンスだが……

 ブラジルサッカーにとって、W杯は絶好のチャンス。筆者はそう期待していた。ブラジルの国内リーグが欧州の影に隠れてしまってから久しいが、「BRICs」の言葉に代表されるように、ブラジルはロシア、中国、インドとともに大きな経済成長が期待されている(現在は成長がやや低迷している感はあるが)。それに伴って国内リーグも活気を帯びるようになった。ブラジル代表も国内組が台頭し、ネイマール(バルセロナ)、パウリーニョ(トッテナム)らの主力も昨シーズンまでは国内でプレーしていた。ロナウジーニョやアレシャンドレ・パトなど、欧州からブラジルに復帰した人気選手も少なくない。欧州ヨーロッパから実力のある選手を引き戻せるだけの資金力も生まれてきたのである。

 今や集客数で欧州ナンバーワンを誇るドイツ・ブンデスリーガの繁栄も、あの06年のW杯がきっかけだった。W杯開催に伴って、スタジアムは次々と最新鋭の設備を誇る姿へと生まれ変わり、より多くの観客を引き込めるようになった。W杯をうまく「ジャンプ台」に使ったのである。

 それは言うまでもなく日本も同様の過去をもつ。02年日韓W杯で多くのスタジアムを建設し、Jリーグの発展にも一役買った。同じ論理で言うのも何だが、W杯を一つのきっかけとして国内リーグがさらに盛り上がるチャンスがブラジルには広がっている、と筆者は思っていた。だが、工事遅れやそれに絡む現実を突きつけられると、チャンスを生かすのは難しいのかもしれないと思うようになっている。