『その手があったか! 「ニッポンのたたき台」』 ~民管理職39人のタスクフォースが考えたニッポンを鍛える55の提言

序章より一部抜粋

3. 「安全保障」からこの国を想う

今そこにある脅威

安全保障は国の主権と存亡、国民の生命と財産に関わるテーマであり、国の繁栄の絶対の基礎となるものです。そのわが国の安全保障が今、中国の拡張主義的な動き、北朝鮮の核・弾道ミサイルなどをはじめ、資源国での地域紛争、さらには頻発する民族紛争、テロ・海賊行為、サイバー攻撃などさまざまな脅威にさらされています。

今後もそれは多様化し、かつ急速に変化していくものと考えられ、日本を取り巻く安全保障の環境は厳しさを増しています。今や、決して「平和」とは言えない世界となっているのです。

1955年、フィリピンから米軍が撤退したのを機に、中国はフィリピン領のミスチーフ礁を奪い、家やヘリポートを建設しました。続いて中国はスカボロー礁の実効支配を目論み、軍事施設まで建設しようとしています。フィリピンはこれに対し古い船を擱座(座礁)させ、厳しいローテーションをやり繰りしながら軍人が常駐し必死に抵抗しています。尖閣諸島問題を抱える日本にとっては決して他人事ではありません。

尖閣諸島周辺では今このときも、海上保安庁の絶え間ない警戒・警告にもかかわらず、中国の挑発がエスカレートしています。漁船、公船による領海侵犯が日常的に行われているだけでなく、領空侵犯、海上自衛隊の哨戒ヘリコプターや護衛艦への火器管制レーダー照射、さらには中国海軍所属と思われる潜水艦による日本の接続水域内の潜没航行が報じられています。

これは国際常識から見て、一線を越えるものですが、詳細がよくわからないまま推移しています。中国当局が軍をしっかりと統制しているのかどうかという疑問すら浮かび上がります。与那国、対馬などの国境最前線の島をどう守るか。島に人がいなくなり、経済が衰退すれば島は守れません。このような中国の動きをみると、今ほど日本が危機感をもって海の国境を意識しないといけない時代はありません。

また、金正恩体制になった北朝鮮は、国際社会のたび重なる制止要求にもかかわらず、核実験やミサイル発射実験を繰り返し、ついには、北朝鮮を支えていた中国までもが金融制裁を本格化させるなど、過去にはない状況が出現しています。もし、朝鮮半島での大規模な武力紛争が起こり、在日米軍基地への攻撃や大量の脱北者が発生すれば、日本への影響は甚大です。

安全保障と経済活動

安全保障問題の難しさは、ひとたび愚策を行えば取り返しがつかなくなるということです。たとえば、尖閣諸島に大量の漁船が大挙して押し寄せ乗組員が上陸する事態が起こり、適切な対応がなされず軍事衝突が起きた場合、日本経済が被るダメージは計り知れません。

その手があったか!ニッポンの「たたき台」
(著)フォーラム21・梅下村塾「あるべき、この国のかたち」を考える会

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輸出入の99%を担う海運の安全が保障されなくなり、工場の生産ラインは停止に追い込まれ、百貨店、スーパー、小売店などから物品や食料が消えます。為替・株式・国債が暴落し企業の資金調達が難しくなるなど、人々の生活も経済全体も混乱をきわめる恐れがあります。

何より、世界2位と3位の経済大国が軍事衝突を起こせば、世界の成長センターであるアジアの未来に暗雲が立ちこめ、世界経済全体にダメージを与えます。

安全保障と経済活動はコインの裏表の関係にあります。安全保障がしっかりしていてはじめて、日々の経済活動が成り立つ一方で、経済活動を通して自国の産業や技術の発展をさせなければ、国力の衰退を招き、結果、安全保障はきわめて脆弱なものになってしまいます。

安全保障とは私たちにとって、大変身近な問題であるとともに重要なインフラでもあるのです。