『その手があったか! 「ニッポンのたたき台」』 ~民管理職39人のタスクフォースが考えたニッポンを鍛える55の提言

序章より一部抜粋

食料にも国家戦略を

食料問題についても、エネルギーとよく似た課題が持ち上がりつつあります。

2012年に米国の穀倉地帯がひどい干ばつに見舞われてトウモロコシや大豆が不作となり、国際市場で取り引きされる穀物価格は、過去に例がないほどに高騰しました。

しかし、日本の食料自給率は先進国の中でも最低水準であるにもかかわらず、この価格高騰を受けても、私たちは食料不足や飢えといった問題に直面することはありませんでした。食料の国際価格が高騰しても問題なく食料を調達することができ、私たちが平穏な生活を送ることができるのは、日本の高い経済力や商社等のグローバルな活動があってこそです。

私たちは自国や世界の食料事情にいささか鈍感なきらいがあります。日本ほどの経済力があれば、食料の価格が高騰しても国際市場から調達できないという事態は考えられないという楽観論も聞こえます。しかし、農産物の次のような特質を考慮する必要があるでしょう。

• 気象条件に左右され、生産量が急に大きく減るリスクがある。
• まとまった量の食料を輸出できる国が少数の国に限られており、農産物によっては地域分散が不十分で、同時不作のリスクがある。
• 農産物ごとに作期の制約があり、需給逼迫に対応した供給量の調整が工業製品のように機動的には行えない。

これら農産物の特質に加えて、中国やインド等の人口急増、さらには地球温暖化や水資源の不足などの影響で、世界の食料需給がますます不安定性を高めていくリスクを考えた場合、食料を調達しようにもかなわないという事態を想定すべきです。安易な楽観論に与することは適当ではありません。

有事の際、食料を安定的に確保し、国民一人ひとりに行きわたらせることは、国家の最重要ミッションの一つです。エネルギーと同様、食料についても「資源小国」である日本は、世界の食料需給を取り巻く状況を冷静・客観的に見つめつつ、食料安全保障のための国家戦略を確立する必要があります。

「総合調達力」と「国際協調主義」

資源小国であり、食料輸入国である日本で何より重要なことは、調達手段の安定化と多様化をきわめて、エネルギーや食料の「総合調達力」の向上を図ることです。

「総合調達力」とは国内調達力と国外調達力の組合せであり、国内調達力の向上は、コストとベネフィットを勘案しながら、国内でのエネルギーや食料の生産力を高めることで達成されます。

一方、国外調達力の向上は、経済成長によって購買力を維持・向上させることを前提としながら、輸入先の多様化を図ることによって達成されます。注意を要するのは、これら調達力がどちらか一方に偏ってはならないということです。

例えば、食料の国内調達力にこだわるあまり、不相応に高コストの食料を国民に押しつけることがあってはなりません。逆に資源小国だからといって、エネルギーのすべてを輸入に頼る姿勢では平穏な国民生活を保障することはできないでしょう。常に両者のバランスを考える必要がある、そうした見地を強調するため、私たちは"総合"調達力と名づけました。

総合調達力向上の大前提にあるのは、良好な国際関係を目指す態度、すなわち「国際協調主義」です。先の大戦の苦い経験が示すまでもなく、資源なき日本においては、輸入の途絶はすなわち国民の窮乏を意味します。日本は、二度と国際社会で孤立してはならないのです。

もちろんこれは、各国にエネルギーや食料を「売っていただく」という消極的な姿勢を意味するものではありません。技術立国たる日本が世界のエネルギー供給体制を積極的に支え、開発途上国で食料増産に貢献することで、世界の人々に感謝され尊敬される存在となるべく、積極的な国際協調主義を追求したいと考えています。

このような問題意識を背景に、私たちは、「総合調達力」と「国際協調主義」をキーワードとして、エネルギーと食料に関する「13の提言」をまとめあげました。