『その手があったか! 「ニッポンのたたき台」』 ~民管理職39人のタスクフォースが考えたニッポンを鍛える55の提言

序章より一部抜粋

2. 「資源」からこの国を想う

資源小国・日本が直面する危機

1970年代のオイルショックは、日本のエネルギー政策を大きく転換させました。中東の石油に依存するリスクを少しでも減らすため、原子力発電の推進、石炭・LNGなど燃料の多様化、省エネ技術の推進などを進め、エネルギー安全保障を確保することが大きな目標となったのです。同時に、地球温暖化対策の観点からも、温室効果ガスの排出がきわめて少ない原子力発電の拡大と、省エネ技術のさらなる推進が進められてきました。

そこに2011年3月、福島の原発事故が起こり、事故前には国内発電の3割を占めていた原子力は、一気にほぼゼロに落ち込みました。現在、代替エネルギーの確保が緊急の課題となっていますが、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは気候に左右される不安定さが避けられず、今のところベース電源として原子力発電分をまかなう力はありません。現実的な代替エネルギーはLNGや石炭などの化石燃料とならざるを得ないのです。

しかし、原子力という選択肢を自ら封じてしまったため、日本は化石燃料の価格交渉力に乏しく、「高値掴み」となっています。2012年度の追加燃料費は3.1兆円にも上り、貿易収支の重大な圧迫要因となっています。貿易収支は2011年度に31年ぶりに赤字に転落し、2012年度には過去最悪の約七兆円となりました。円安下での貿易赤字はさらなる国富の流出を意味し、国際比較で割高なエネルギーコストは産業の競争力を削ぎ、結果、産業の空洞化に繋がっています。

日本が今後も技術立国として競争力を維持し続けるためには、安価で安定的にエネルギーを調達することが不可欠です。時間の浪費はもう限界に達しています。政府は一刻も早くエネルギーに関する戦略の全体像を明らかにすべきです。

米国を代表する知日派論客の元米国務長官・アーミテージ、ハーバード大学教授・ナイ両氏は、福島の事故後、エネルギーで混乱を抱える日本に対して重要な指摘を行いました。(2012年10月26日「第9回日経・CSISシンポジウム」における発言)

「原子力発電を欠くことは、石油・天然ガス・石炭の輸入を激増させる。さらにエネルギー政策の決定の遅れは産業を空洞化させ、国家の生産性を脅かす。原子力発電はなおもエネルギー安全保障や経済成長、環境上、著しい可能性を持つ」

「新興国が原発建設を続けているさなかでの日本の脱原発は、責任ある国際的な原子力開発を阻害する。日米両国は、国内外で安全かつ信頼性の高い原子力発電を推進する政治的・商業的利益を共有している」

「『今後、中東の石油とガスの輸出量が、ますます豊かになるアジアの消費国に対し急上昇する』という世界規模の石油取引におけるシフトが、世界の地政学を不安定にし、中東のエネルギー供給国へのアクセスやそれらの国々からの出荷への脅しとなることに対し、世界第三位の石油輸入国である日本と米国は、ますます戦略上の利害を共有しつつある」

これらの発言は、エネルギーは単に日本一国の生産性を脅かすだけの課題ではなく、世界の安全保障を確保するうえで重要な課題であり、この面で日米の戦略的な連携を拡大・深化させ、日米が世界の平和と安定した成長に向けて主導的な役割を果たさなければならないことを説くものです。

他国に指摘されるまでもなく、私たちは、自身の生存のため、また国際社会の一員として世界の安定的な発展に向けて、日本のエネルギー政策について真摯な議論を通じて、的確な答えを見い出さなければなりません。