『その手があったか! 「ニッポンのたたき台」』 ~民管理職39人のタスクフォースが考えたニッポンを鍛える55の提言

序章より一部抜粋

1. 「教育」からこの国を想う

教育は人づくりの礎

社会人になって20年ほどの歳月が過ぎてひとつ気づいたことがあります。それは、小学校卒業までに学んだこと、先生の言葉、友達の指摘、祖母の教え、家族旅行での体験、こうした幼い頃の経験が自分の人格形成に大きな影響を与えているということです。

「教育」があってはじめて人間は人間たり得る。そんな当たり前のことが20年を経てようやく実感できました。日本は島国であり、独自の文化を2000年以上も脈々と受け繋いできた世界でも稀有な国です。

同時に、資源小国であり、エネルギーや食料の多くを他国に頼って生きています。そんな日本にとって最大の資源は人です。国づくりは人づくりから。昔から言われてきたこの結論に私たちが到達するのに、それほど時間はかかりませんでした。

戦後日本の教育は、教師の言うことをしっかり聞き、覚え、それを速く正確に実行する能力の育成に主眼を置き、高度経済成長を支える人材を供給するうえで大成功をもたらしました。かつての教育は、今よりずっとシンプルなものだったように思えます。

しかしそのスタイルは、1990年代初頭以降、バブル経済が崩壊するころから万能ではなくなってきたようです。インターネットの出現とその進展のなか経済のボーダレス化が加速度的に進み、日常生活からビジネスまで、ゲームのルールが大きく変わったことが原因の一つに挙げられるでしょう。

競泳やスキージャンプなどのスポーツは、技術の進歩とルール変更が追いつき追い越されしながら発展してきました。教育も良い部分を残しながら、時代に合わせて変わるべきときが来ています。

どこから手をつけるか

教育において最も重要な時期は、幼少期、つまり幼児・初等教育であると私たちは考えました。社会性を身につけ、公共心を養うためには、生まれてから幼少期での家庭での学び、そして学校での幼児・初等教育が重要なのです。

昨今、学校の問題がニュースで多く取り上げられます。いじめ、学級崩壊、教育委員会、教師の資質、教科書問題など、枚挙にいとまがありません。特に、2006年実施のPISA(OECDによる国際的な生徒の学習到達度調査)順位の下落は、教育関係者に大きなショックを与えました。

これをきっかけに、1980年度から始まった「ゆとり教育」が見直しされ、最終的に小学校では、2011年度から全面改訂された新指導要領を実施し、「脱ゆとり教育」へと方針を大きく転換しました。

ゆとり教育の混乱がもたらしたものは、公立学校の凋落と私立学校の台頭でした。結果として、家庭の所得格差が子どもの学力格差につながる傾向が指摘されるようになっています。

私たち親の世代は機会の平等を前提に自由競争の社会に生きてきました。それが自らの所得の差異となって現れるのは良しとしても、その結果を次世代に引き継いでしまえば、不平等の連鎖を生んでしまいます。これは何としても断ち切らなければなりません。私たちが幼児・初等教育に注目する一つの理由です。