激論!「親子のDNA鑑定」「高齢出産」「体外受精」科学の進歩が、新しい苦悩を生む

声に出して言いにくい「日本の大問題」第1回 山折哲雄×二宮周平×田口早桐
週刊現代 プロフィール

二宮 何が家族の形を決めるのかを考えるとき、法律がリードして、家族の形を決めた時代もあります。それは戦後まもなくの民法が改正されたときです。それまでの「家制度」を解体し、夫婦と子供が家族の中心になった。ただ、その「家」の意識は続き、家長たる夫が働き、妻が専業主婦として子育てをするという形式は残った。それが、日本の高度成長を支えたわけです。

田口 しかし、今は女性が働くのが当たり前。体外受精を行いたいと産婦人科を訪れる方の傾向も変わってきました。昔は専業主婦で、夫婦生活を何年も送ったけど子供ができないと悩んでいる方が多かった。今は自分でキャリアプランを考えながら、あえて高齢出産という選択をする人も多い。初婚年齢が上がっていることもあり、現在では体外受精をする方の平均年齢は39歳まで上がっています。

二宮 そういった社会の変化、とくに親子の形の多様化に民法が対応できているのか。それを問いかけるニュースでもありました。

山折 このニュースの論点の一つである、性と家族の問題を考えるとき、見逃されている点があるように思うのです。

それは、美輪明宏さんのような生き方です。美輪さんは、生まれてきたご自分の運命をそのまま受け入れて、一人の成熟した人間になろうとした。美輪さんは性別を変えることも、従来の結婚をする道も選ばなかった。性別を超えて、一人の人間としてどう生きるかを考えてきた方です。そんな「生き方」をキチンと評価する場が日本にはなくなっているのではないか。

そして、生き方と言えば、先ごろ引退を発表した、フィギュアスケートの安藤美姫選手も参考にすべきです。昨年、彼女が25歳で赤ちゃんを生み、「父親の名前は明かしません。子供とともに二人でオリンピックを目指します」と言ったとき、大きなバッシングが起きましたね。まったく馬鹿げています。彼女は自分の意志で、たくましく生きる決意をした。批難するところなど一つもない。

二宮 日本人の、家族のあり方についての不寛容さを表す出来事でしたね。

山折 そして、この国がおかしいのは、科学技術の進歩によって生まれた新たな苦悩とモラルについて考えるとき、宗教や哲学に解決策を求めてくることです。科学者自身が、自ら考え、反省すべきではないですか。科学者や技術者のエゴにつきあうのが、宗教の役目ではありませんよ。