激論!「親子のDNA鑑定」「高齢出産」「体外受精」科学の進歩が、新しい苦悩を生む

声に出して言いにくい「日本の大問題」第1回 山折哲雄×二宮周平×田口早桐
週刊現代 プロフィール

山折 しかし、日本では、その是非や「出自を知る権利」について、ほとんど議論になっていませんね。

田口 なぜ議論にならないかというと、体外受精や代理母出産などの生殖補助医療について、まだ奇異の目で見る向きがあって、日本の社会が不寛容だからだと思います。

二宮 同感ですね。だからこそ、法律や制度を整え、生殖補助医療とはこういうものだという具体的なイメージを示したり、「出自を知る権利」をどう扱うか決め、社会をリードしなければいけない。しかし、まったく遅れています。

田口 昨年12月に話題になったニュースが象徴的です。性同一性障害を理由に、性別を女性から男性に変更した夫とその妻が、第三者からの提供精子で人工授精してもうけた長男について、夫の実子であると最高裁が認めました。

山折 賛否両論ある、難しい問題ですね。子供が育った時に、自分の「本当の親」が誰なのか、アイデンティティについて悩んでしまう。その苦悩を無視し、親のエゴを認めた判決であると、異議を唱える方もいる。

二宮 ええ。裁判でも、その「男性」を父と認めるかどうか、裁判官の意見が3対2と割れました。私自身は判決を支持しますが、家族法の研究者でも反対する人がいます。

ただ、その4歳になるお子さんは、別の男性とトイレに行ったときに、不思議そうに男性のおちんちんを見ていたとか。父親との違いに気づき始めています。そして父親は、「実はお父さんにはちんちんがなかったんだ」と伝えている。父親は、お子さんの出自について幼年期から伝える努力をしていると思います。

科学者にモラルは必要か

田口 生物学上の親子と、法律上の親子が意味することが、一致しない。それは今に始まったことではないんです。この親子の問題を新しいものとして考えるのは違うのではないかと思います。性同一性障害の方ははるか昔からいたわけですし、第三者からの精子提供によって受精卵を作る技術は、生殖医療の中でも古い技術です。

山折 いかに日本人が、家族の形について功利主義的にしか考えていないかが分かるニュースだった。