一人の学者裁判官が目撃した司法荒廃、崩壊の黙示録!『絶望の裁判所』著者・瀬木比呂志氏インタビュー

最高裁中枢を知る元エリート裁判官による衝撃の告発
瀬木 比呂志 プロフィール

--このような根源的、包括的、徹底的な司法批判、裁判所・裁判官批判の本を出すことに対する恐れの気持ちはありませんでしたか? 裁判所当局は、本書に対してどのようなリアクションをとると考えられますか?

『絶望の裁判所』は2月19日発売

瀬木: 恐れというより、やはり、自分の属していた組織を批判するわけですから、痛みはありました。一気呵成に書いたのは、長く抱えていることがつらい書物であったということもあります。もっとも、大部の専門書が書けるだけの内容を興味深くコンパクトに凝縮するわけですから、推敲は十二分に行いました。
 裁判所当局は、普通に考えれば、黙殺し、頬被りを決め込むでしょうね。もしも反論を行えば、当然僕の再反論も認めなければならず、そうするとさらに都合の悪いことになっていくことは目にみえていますから(笑)。
 あと、裁判官を始めとする法律家の中には、ことに匿名で、人格攻撃や中傷を行う者は出てくるかもしれません。そういう人間の存在は、本書第5章の記述からも、容易に想像されることと思います。

--社会的地位が高く、年収2000万円という高収入の仕事を捨てて、学者になられたのはなぜでしょうか?

瀬木: 本にも書いたとおり、三つの評価の高い大学から声をかけてもらったわけですが、二つ目の有力国立大学については、本当をいえば、既にその時点で移りたかった。しかし、収入低下に加え、半単身赴任とそれに伴う年間数百万円の出費があっては無理でした。
 明治大学は、私立の中で最も意識していた大学の1つです。大手の中でも、学風が自由で、研究環境や給与水準を含め、総合的な諸条件も比較的いいのです。それでも収入は下がりましたが、別に半単身赴任などが伴うわけではないですから、あまり大きな問題ではないですね。
 考えてもみていただきたいのですが、旧ソ連や昔の中国から自由主義社会に亡命してきた知識人が、「こっちのピロシキはまずい」とか、「中華が偽物だ」などといった不平を漏らすでしょうか?(笑) 裁判所における僕の最後の7、8年間の生活は、精神的にみれば、全体主義的共産主義国家にあって亡命の機会を待っている知識人のそれに近いものだったのです。

--最高裁事務総局による徹底的な裁判官支配、統制の実態には驚きを禁じえないのですが、なぜ誰も異を唱えないのでしょうか?

瀬木: 第一に、多数派の裁判官は、感覚が麻痺していて、いかに異常な状況に置かれているかということを直視できなくなっているからでしょう。
 第二に、現在の裁判所組織の中にいて異を唱えるのは、それこそ、全体主義国家や全体主義的共産主義国家の中でそれを批判するに等しい部分があるからです。
 こうした支配、統制のメカニズムについては、第3章に詳しく記したとおりです。