林千晶×横田響子×小林麻実×堀潤【前編】 「教育的・情報的な『常識』があるから、女性のエリートが育たない」

「予測しない」「実践する」「今想像できないことはしない」

堀: 具体的な話はまたのちほど聞いていきたいと思います。お隣は2万人以上が登録するクリエイターネットワークを運営されていて、現在MITメディアラボの所長補佐をつとめていらっしゃいます株式会社ロフトワーク代表・林千晶さんです。よろしくお願いします。林さん、さきほどMITメディアラボの話が出たんですけども。

林千晶氏

林: はい。さきほど所長を務める伊藤譲一の「地図よりもコンパスを」という話が出ていましたけれども、2013年の年初に伊藤とワインを3つの抱負を決めたことがあります。それぞれ、「予測しない」「実践する」「今想像できないことはしない」だったんです。 

解説すると、さきほど堀江さんがおっしゃっていましたけれども、「計画しすぎる」ことは良い結果を生まないと考えているんです。晴れたときにつくった計画があって、雨が降ったら変えればいいのに、計画どおりにやろうとする。雨が降ったときに晴れのプランを実行しても楽しくないじゃないですか? それと同じで、予測しすぎちゃダメで、むしろ実践しようと。 

最後の「今想像できないことはしない」は、いま知っているやりたいことはぜんぶやれているから、未来は今想像できなかった楽しいことをやっていたいよね、ということから出てきたんです。 

「その3つを方針にしていこう」と言ってたんですけれども、それが凄く反響があったんです。さっきのトークにも通じるなーと思ったんですが。

堀: やはりクリエイティブな環境を自分で作っていかなきゃいけないですよね。今「やらない」と決めてそれに従っていくのは非常に重要だと思います。

あと印象的だったのは「ベンチャーのみんなの感覚は地面に打ちつけられる前に飛行機をつくって脱出する」感覚だという話。投資家からお金がポンと入って、その瞬間からお金が減っていく。お金がなくなる前に新製品・新サービスを打ち出して次の投資に備えていく。

そうしたことを日本の大企業の役員をされている方にお話しされているのを聞いたことがあるのですけれども。ほんとにすごいスピード感だなあと思いました。そのスピード感でやっていると。

林: 実は私そういうタイプじゃなくて。ロフトワークって今の状態になるのに13年かかってるんですよ。今でこそ社員100人ぐらいで、クリエイティブに関わるさまざまな事業を手がけているんですけど、すごくゆっくりで、多くの投資家から「この会社はうまくいかない」と言われていました(笑)。 

起業当時、著名な投資会社に伺って、投資してくださいと言ったら「お嬢さんMBAはとってるかい」と言われて。「とってない」と答えると、「MBAもとってないような人間が来る世界じゃない。本にサインしてあげるから、起業は諦めて帰りなさい」と言われて、私泣きながら歩いて帰ったんですよ。 

堀: なるほど(笑)。木暮さんの本ですね(笑)

林: そうです。さっきは追い込まれていましたが、木暮さんは悪くない(笑)。六本木を泣きながら歩きましたね。だから、すごくゆっくりです。でも、すごくゆっくりな分、楽しく仕事をやり続けられているなあと一面では思っているんです。

つまり、成長成長というと、やりたいことに加えて、成長させるために何をやるんですか、来年の事業を予測しなさい、10倍になりなさいというプレッシャーが出てきて、どんどん「やりたかったこと」が「やらなきゃいけないこと」になってくるのかなと思います。

それに比べて私は「やりたいことはなんだろう」というところを1年単位でやってきているから、「ゆっくりだけど、変わらずやりたいことしかやってない」ということはあるのかなあと思います。