長谷川幸洋×原丈人 VOL.2「会社の持続性や分配の公平さで、株価が上がる仕組みをつくろうと思っています」

『現代ビジネスブレイブ イノベーションマガジン』---「長谷川幸洋がキーマンに聞く」より

薬のネット販売解禁の議論はずれている

長谷川: 起業家のなかには政府がいちばん大事なことはお節介をやめることだ、私たちに自由にやらせてくれれば伸びる、という声も強い。それが規制改革の根本の議論です。その一方でお節介を求める国民や消費者の声というのも相当大きい。

最近の例でいえば、安倍総理は薬のネット販売を全面解禁しようとした。最高裁も厚労省の法令を違法だと言った。それにもかかわらず、「安全を確認するためには対面販売でなければダメだ」ということで、結局最長で3年間は対面販売に限ってネット販売はそれだけ、ということになりました。

つまり、総理が言っているのに、そんな薬のネット販売一つすらちゃんとできないんです。その背景には、「いや、やっぱり心配だから政府がしっかりコントロールして監督してくれないと困る」という気持ちが相当あるな、と思うんです。

原: それはその人たちの声をメディアが世論として作るようにしているからですよ。それともう一ついえば、薬のネット販売のようなくだらない話を目玉にしたことが失敗ですね(笑)。あんなものはくだらない。家庭医薬品販売の会社の社長さんに聞いたんだけど、大衆薬は年々減っているんですよ。薬局をネットにしたからといって経済が活性化するわけがない。ネット販売にした途端に、風邪薬の販売が増えるわけじゃありません。

じゃあ何のためにやっているのかというと、薬のネット販売というのは、ネットで買うと裏側についている決済機能、そっちのほうを使わせたいわけです、クレジット決済とかね。そこから保険だとかいろいろな金融商品に発展していくでしょう。だからあれは、規制緩和というよりもネット業者に対する利益誘導という面もある。

ITのなかで伸びているのは全部後ろに短期金融がくっついている会社ばかりなんですね。純粋なITで金融業者がバックについてない会社は、そんなには株価も高くはならない。短期的な利益を追求して投資家のリターンを早く回転させる、その道具としてITの会社が伸びているんですね。

長谷川: 薬のネット販売を考えている人たちは、市販薬のマーケットは大体6千億円くらいといわれているけれども、実は医師の処方箋を必要とする処方箋薬のマーケットは6兆円くらいで10倍くらいある、本当の狙いはその6兆円市場のほうだ、と言っていますね。

薬局・薬剤師がものすごく抵抗しているのは、その処方箋薬のほうに大きなマーケットがあって、ネットの業者にはここに絶対進出してほしくないからだと。そこに防波堤を構えるために、処方薬から市販薬のところに壁を高く設けているのだ、というふうに、楽天の三木谷浩史さんなんかは言っています。

彼の狙いも、もちろん6千億円の市販薬のマーケットではなくて、その6兆円の処方薬のほうのマーケットですね。日本の病院では、薬の処方のためだけで30分以上待たされるということがしばしば起きている。そこをネットでも処方薬が買えるようになれば、診察さえ終わればすぐに帰れるでしょう、と。帰ってからコンピュータを操作して自分で郵送してもらえるようになれば、待ち時間も減るし、全体に医療サービスが効率化するんじゃないのか、と。そういう議論です。

原: その議論はわからなくはない。けれども、大した規制改革にはならないですね。根本的なところがずれているんですよ。まず、ネット企業の人間が自分たちの分野の規制改革を言うのはおかしいですよ。全然違う分野に言わないと、利益誘導だと思われてもしょうがないですよね。

オリックスの宮内義彦さんがずいぶんいろいろ言われたのと同じことですよ。今度は楽天の三木谷さんがまったく同じ構図になっているわけです。その程度の発想しかないのが不思議ですよね。頭が良いならもっと違うことを言えばいいのに、自分のところにまったく利益が生まれない分野で規制改革を訴えれば、みんな本物だと思いますよ。

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