[虎四ミーティング~限界への挑戦記~]
山﨑武司(元プロ野球選手)<前編>「逆境を救ってくれた2人の恩師」

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フルスイングさせてくれた野村野球

二宮: そして2年目、監督に就任したのが野村さんでした。野村さんといえば、“ID野球”です。最初は自分には合わないと思いませんでしたか?
山﨑: 思いました、思いました(笑)。「あ、オレ絶対に合わないな」と。データなんか、いちいち覚えていられないと思いましたからね。ところが、結果的には野村さんの野球は、僕にはピッタリ合っていました。

二宮: 野村さんは三振をしても「根拠さえあればいい」と怒らなかったそうですね。
山﨑: そうなんです。そこが他の監督はとはまったく違っていました。実は僕は楽天に入るまでは三振は一番やってはいけないと思い込んでいました。というのも、中日時代に指導してもらった星野仙一監督が三振を嫌がっていたからなんです。僕は三振は多い方でしたが、それでも100にだけはいかないようにしていました。実際、それまで一番多くても99(1999年)で止めているんです。

二宮: 野村さんが就任した楽天2年目以降は、三振が100を超えています。
山﨑: はい。それは野村さんに「三振だろうと、いい当たりだろうと、アウトはアウトだろう。そんなもん、根拠さえあれば思い切って振ってくればいいんだ。それでダメなら次、考えればいい」と言われたことで、三振をすることを怖がらなくなったからなんです。野村さんのその言葉で、気持ち的にすごく楽になりましたね。野村さんにはいろいろと教わりましたが、結局は「思い切りの良さが一番大事だ」ということを教えてもらったような気がします。

二宮: 指揮官のひと言って大事ですね。それが40代を目前にしての復活につながったと。
山﨑: はい。迷いが一番バッティングを狂わせますからね。だからこそ、事前に思い切りバットを振れる状況をつくっていくことが重要なんです。僕も対戦するピッチャーやキャッチャーのデータを洗い出してから、試合に臨んでいました。それと、野村さんのベンチでの“ボヤキ”を聞いて参考にしていました。

二宮: ベンチではどういうことをボヤいていたんですか?
山﨑: 野村さんが一番気にしているのは、やはりキャッチャーのリードなんです。“このキャッチャーは、こういう傾向のリードをするな”とボソッと言うと、本当にその通りになる。僕らとは見るポイントが違うんです。常に選手を観察している。野村さんが言う“考える野球”の原点に触れたような気がしましたね。