[プロ野球]
佐野慈紀「あっぱれ! 則本&小川の投げっぷり」

スポーツコミュニケーションズ

進化の裏にある“バイブル”の存在

 今季、則本投手は27試合に登板し、15勝8敗、防御率3.34という成績を挙げましたが、彼が並みのルーキーではないと感じたのは、成績に限ったことではありませんでした。驚いたことに、彼はシーズン中に、意図的に自分を進化させようとしたのです。人は成功している時、それを維持させようとするのが普通です。しかも、則本投手は1年目なのですから、それが当然とも言えます。

 私がプロ1年目の時、開幕当初の則本投手と同様に、ストレートとスライダーで勝負していました。それである程度の手応えを掴んだ私の頭の中にあったことといえば、「とにかく全力で投げること」。それ以上のことを考える余裕はまったくありませんでした。ところが、則本投手はシーズン前半はストレートとスライダー中心だったのですが、後半にはチェンジアップでも勝負できるようになり、さらにシーズン終盤には新たにフォークを習得して武器にしたのです。

 この則本投手の進化の裏には、身近に手本となるピッチャーの存在があったことは否めません。その存在とは無論、田中投手です。田中投手は150キロ以上のストレートと、鋭く落ちるスプリットがあります。これだけでも十分なのですが、決してそれだけに頼ってはいません。他にも球種をもっていますし、コントロールもいい。こうした力だけではなく、ピッチングの基本がしっかりしている田中投手を間近で見て、則本投手はいろいろと感じ、学んだのでしょう。それは初めてとなるシーズンオフ、田中投手に合同トレーニングを直訴したことからもわかります。

 さて、巨人との日本シリーズを制し、楽天は日本一となったわけですが、もちろん82勝のうち、24勝も挙げた田中投手の活躍は欠かすことはできません。しかし、クライマックスシリーズファイナルステージを含めたプレーオフを勝ち抜いた要因は、則本投手の活躍なくしては語ることはできないことも、また事実です。プレーオフに限って言えば、最大の功労者と言っても過言ではありません。

 特に日本シリーズの開幕戦でのピッチングは、大きかったと思います。結果的には負け投手にはなりましたが、その内容は決して悪くはありませんでした。8回4安打2失点は好投というには十分。試合をつくるという先発の責任は、きっちりと果たしています。そして何よりも、巨人サイドには嫌なイメージを与えられたと思うのです。おそらく、初戦をモノにしたとはいえ、巨人は則本投手を打ち崩したとは思えなかったはずです。それどころか、「やっかいなピッチャーだな」と感じたことでしょう。

 普通に考えれば、巨人は敵地での初戦を完封でモノにしたのですから、そのまま勢いに乗ってもおかしくはなかった。ところが、2戦目以降も巨人打線がなかなか実力を発揮することができなかったのは、やはり初戦の勝利が“快勝”ではなかったからにほかなりません。初戦の則本投手のピッチングは、2戦目以降のチームに好影響を与えたのです。

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