鈍足の4番打者にして、愛すべき酔っぱらい 阪神タイガース「遠井のゴロちゃん(遠井吾郎)」を語ろう

今週のディープ・ピープル
田淵幸一×江夏豊×川藤幸三

週刊現代 プロフィール

江夏 プロは結果がすべて。どんなに飲もうが、グラウンドで結果を出せばいい。しかも、あれだけ飲んでも外で問題を起こしたことはないんだから立派だよな。

田淵 遠井さんはスポンサーをつけてご馳走になる人じゃなかったから、自分の好きなときに自由に飲んだ。タダで飲めたらいいかもしれないけど、そうなると相手に合わせなくちゃいけない。俺もタダ酒はなるべく飲まない姿勢を見習った。

川藤 自分のお金で飲んでいたから、給料はほとんど酒に消えていったけどな。

田淵 あと、酒を抜くために、試合前にボクサーが着るようなカッパを着込んで走っていたのをよく覚えている。朝まで飲んだら、夏のどんなに暑い日でもやっていた。ガンガン汗をかいて酒を抜く。あれは真似できなかったな。

川藤 外野のフェンス沿いを黙々と走っていた。それを見て、この人は単なる大酒飲みやないんやなって(笑)。そうやって後輩にものを教えてくれとった。それこそ本当の先輩や。怖い、やかましいだけの先輩とは違った。言葉ではなく、背中で語るタイプやった。

江夏 守備なんかはお世辞にもうまいとは言えなかったけど、一生懸命守っているというのが伝わってくる人やった。下手でも必死に捕りに行く。足も遅かったけど全力で走っていた。

田淵 一生懸命走るといえば、遠井さんのオールスターでのランニングホームラン。あれには驚いた。

川藤 ワシは現場におらんかったから、遠井さんがランニングホームランを打ったと聞かされたときは、思わず「そんなはずないやんけ」と口走ったよ。

 

江夏 俺と田淵は一緒にいたけど、ライト線に打って、二塁打のはずが……。

田淵 ボールを追ったライトのアルトマンが、芝に足を取られて転倒し、なかなか起き上がらない。

江夏 センターの白仁天はすぐに起き上がると思ったのか、カバーに行っていなかった。おかしいと気づいて追いかけ出したものの、鈍足の遠井さんでもホームまで帰ってこられた。

田淵 遠井さんが、ヒーヒー言いながら、息も絶え絶えにホームインしたものだから、セ・リーグのベンチは大爆笑だった。

江夏 遠井さんが「死ぬかと思った」と言うから、ミスターも王さんも、腹を抱えて笑っとったわ。

田淵 そういえば川藤はオールスターで、逆のことをやってたな。