ガスの利用状況で「みまも~る」
東京ガス「気づかう気持ちを形に」と送信サービス[見守り社会]

高齢者も含め都会の孤立死(孤独死)が問題になるたびに、電気、ガスの公共料金の利用・支払い状況などから異常を察知できなかったのかという指摘がされてきた。だが、実際には個人情報の壁が大きく立ちはだかる。こうした指摘の声がある一方で、あまり知られてはいないが、東京ガス(東京都港区、岡本毅社長)は「ひとり暮らしのご高齢者を気づかう気持ちを形に!」と2002年10月から見守りサービス「みまも~る」を実施している。個人情報の壁を取り払うために、1人暮らしの高齢者と見守りたい家族の思いをつないだガス会社ならではのサービスだ。

サービスの概要は1人暮らしの高齢者の日々のガス使用量を離れて暮らす家族に知らせることで、家族による見守りをサポートするというものだ。高齢者の自宅に設置したガスメーターからガスの利用状況を「ステーション24」に送信。インターネットを通じて見守る家族の携帯電話に利用状況を1日最大2回の送信をしてくれる。メールは1時間ごとのガス使用量が表示されるため、使用量によって食事時間帯や入浴の時間帯などを推測することができる。また、ホームページで過去1週間のガスの利用状況を照会することもできる。日別時間別の使用状況がまとめてグラフで表示されるので、1週間の行動パターンなども確認することができる。

通信会社や警備会社などが提供する同種のサービスは、屋内に置いたセンサーなどが人の動きを感知して、家族に知らせるシステムが主流で、どうしても「見られている」という抵抗感が高齢者側にある。これに対して「みまも~る」は普段通りにガスを使った生活をするだけなので、高齢者側のストレスが少ないのが特徴だ。

そもそも同社はガス漏れなどを検知した際の緊急通報、外出先からガスの消し忘れの確認や遮断依頼など家庭内の「防災」をサポートするサービス「マイツーホー」を1989年から始めていた。このシステムを応用し、「防災」の観点から高齢者の見守りサービスへと展開していった。

同社が扱うガスメーターは約1098万件(13年3月末時点)。「マイツーホー」の加入者数は約40万件。「通信機器・監視システムの整備を進めていた背景があったからこそ、高齢者対策への展開が可能だった」と同社ステーション24フィールド技術・推進チームの横山睦人チームリーダーは説明する。

サービス料金は月額987円(初期加入料金5250円)で、見守りと同時にガス漏れなどのマイツーホーのサービスも提供してくれる。加入件数はサービス開始時期から年々増加傾向にあるが、今年3月末で352件。横山リーダーは「利用者の数の問題ではなく、必要とされる方がおいでになり、好評をいただいているという意味は大きい」と話す。

実際に利用者向けに実施したアンケート(複数回答可)では「離れて暮らす心配が軽減できた」という声が、見守る側(65人中57人)も見守られる側(34人中22人)もトップで、見守られる側では22人が「普段通りガスを使うだけで『元気だよ』というメッセージが自動的に伝わるところがいい」と答えている。「特別な新しい器材や操作が必要な見守りサービスは高齢者はなかなかなじめない。日常生活を何も変えずに見守りができる点がいい」「普段よりガス使用量が多くなった時は体調がよくないことが経験で分かってきた。高齢者が心配かけまいと大事なことを言わないので助かっている」などとの声も寄せられている。

「監視」の抵抗感がないのが特徴

高齢者問題に詳しいジャーナリストの藤本順一氏は「体が動く限り、1人暮らしを選択する高齢者は自由な生活を求めている。センサーなど機械による見守りは、たとえ身内といえども『監視される』という意識も働き、抵抗がある。『みまも~る』は普段通りの生活をしながらの見守りが可能で、双方の安心が保てるという点が評価できる。元気な1人暮らしの高齢者の増加が見込まれる中では、ひとつの有力なツールとなりえるのではないか」と指摘する。

このサービスへの加入を決定したのは息子や娘などの見守る側が78%を占めるが、18%は見守られる側が決定しているケースもある。また、見守られる側の年齢層は60歳代以下が6%なのに対し、70歳代が51%、80歳代が40%、そして90歳代も3%となっている。

また、見守られる側と見守る側の住んでいる所の距離は、3時間以内が9割を超え、1時間以内では6割を占めるなど、同社は「双方ともに東京ガス管内にお住まいのケースが多いのでは」と分析している。

藤本氏は「導入料金や加入料金の一部を行政が負担したり、地域を挙げての見守り態勢の確立が必要ではないか。また、他のガス会社等でもシステムの構築を急ぎ、地域を超えて連携のネットワークを広げる必要がある」と指摘する。同社は12年4月から東京都武蔵野市と連携。市が1人暮らしの高齢者への加入料金と半年間の利用料を助成する制度を始めたほか、高齢者向けマンション管理会社との提携などを進めている。

全国的にみると、大阪ガス(大阪市、尾崎裕社長)グループが、1999年4月から見守りサービスを実施している。こちらはガスの使用量ではなく、トイレのふたにセンサーをつけての見守りや、オペレーターによる定期的な電話連絡による見守りサービスを行っている。

大阪ガスによると、加入者は近畿圏内で約4万件に上る。ただし、センサーによる見守りは数百件程度で、ほとんどは電話連絡による見守りサービスの利用者。同社によると、加入件数の約9割が自治体から委託を受けてサービスを提供しているという。藤本氏は「行政だけでカバー仕切れない部分を、官民連携という形で進めているひとつの参考事例」と話している。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら