60年前、生まれた病院で「取り違え」貧しい他人の家庭で育った 男性の人生を考える

実の親は裕福だった いまはトラック運転手 いまさら「真実」が分かっても…
週刊現代 プロフィール

「B氏は認知症を患っていた〝父親〟の介護を手伝わなかったといいます。'99年に亡くなった〝母親〟の法事にも欠席するなど、〝両親〟に対する態度は実弟の許せる範囲を超えたものがあったようです。にもかかわらず、遺産の多くは長男としてB氏が相続した。そこで弟3人は、B氏が相続したものを取り戻すために訴えたというわけです。

もともと、出産の際、用意した産着と異なるものをB氏が着ていたこと、B氏の容姿や性格が他の兄弟と似ていないと親類から言われていたことを生前、母親が漏らしていた。弟3人はB氏との間に血縁関係がないのではないかと、長年疑いを持っていたのでしょう」(全国紙司法担当記者)

裁判所はDNA鑑定の結果から、Bさんと弟3人の間に血縁関係がないことを認定。だが、生まれたときから一緒に暮らしており、育ての親との間に親子関係が存在しないとは言えないとの判決を下した('11年に最高裁で確定)。

学歴もカネ次第なのか

そこで弟3人は真実の兄を探すべく、弁護人などを通じてAさんとBさんが生まれた産院の分娩台帳を検証。調査会社などに依頼してAさんを探し出した。

調査会社から連絡を受けてはじめて、Aさんは自分が両親だと思っていた二人が、まったくの他人だったことを知る。そのときの心境を会見でこう語っている。

「そんなことがあるわけないと、認めたくない気持ちがあった」

Aさんの気持ちとは裏腹に'12年1月、DNA鑑定によってAさんが実の兄であることが確定。同年8月、ついこの前まで存在すら知らなかった兄とその弟3人は、病院を相手取って今回の裁判を起こしたのだ。

判決は、育った環境の格差が学歴の格差につながると指摘する、踏み込んだものだった。曰く—、

〈真実の両親の庇護の下で経済的に不自由のない環境で養育され、望みさえすれば大学での高等教育を受ける機会を与えられたはずであったのに、誤って(別の)夫婦の下に引き取られてしまった結果、困窮した生活の中で、およそ大学進学を望めるような環境になかったことは明らかである〉

Aさんら原告は今回の取り違え事件によって失った利益を、大卒者と中卒者の平均賃金による生涯賃金の差額から生活費を差し引いた4600万円だと主張した(請求額は4439万円)。