猪瀬直樹都知事は、完全に開き直っている。
東京地検特捜部が、医療法人「徳洲会」から個人的に借りたという5000万円について事情聴取を進め、都議会やマスコミが徹底追及の姿勢を見せている最中の11月3日、資金管理団体「猪瀬直樹の会」が主催する政治資金パーティーを開いた。
私は、2万円の会費で開くこのパーティーが、「石原慎太郎の会」を継承したものであることを、本コラムで何度も指摘した。今回の5000万円もまた、「石原後継」である猪瀬知事に、石原前知事のスポンサーだった徳田虎雄氏が拠出したものだ。
同じ構造のなかから発生したカネを受け取り、5000万円については都議会で「心から深くお詫び申し上げます」と謝罪しながら、一方では1000万円内外の収入を臆面もなく受け取ってしまう。反省の気持ちはまったくない。
猪瀬知事は、特捜部がこの5000万円について、市民団体からの告発を受理して捜査しているものの、「個人の借金」という主張を貫けば、政治資金規正法も公職選挙法も乗り越えられると高をくくっている。また、頭を下げていれば、そのうちに「人の噂も七十五日」で、バッシングが治まると思っている。
しかし、都知事の職務権限は果てしなく広い。オールマイティーの権力を握っているがゆえに業者は工作し、これまでに何人もの知事が塀のなかに落ちて行った。猪瀬知事にもその可能性があった、という事例がある。都内精神病院の買収計画だ。
まず、「取り纏め依頼書」をごらんいただきたい。
業者に依頼しているのは徳洲会の「名瀬徳洲会病院」で、今年9月8日からの3カ月間を期限に、「売買を前提にした調査の取り纏め」を依頼している。
当該物件は、都内の精神病院で約300床。買収に向けて書類を収集、当該医療法人の代表や役員との面談、医療施設の所有権者は別なので、そちらへの面談と現地視察のセッティングまでが含まれている。
注目すべきは日付だ。沖縄県奄美市の名瀬徳洲会病院で会談があったのが9月4日で依頼書の作成は9月11日である。交渉にあたっていた医療業界の関係者によれば、10月初旬、現地視察するまでに、挨拶を兼ねて徳田毅代議士の事務所を訪問することになっていたという。