矢野隆司 第1回 「『極道辻説法』の「和尚前白」はシマジさんがちゃっかり先生になり代わって書いていたんです」

島地 勝彦 プロフィール

セオ 凄い執念ですね。たしかに週刊誌の編集者は忙しいから取材のときの資料なんか取っておきませんからね。どんどん堪るから記事になったら捨てていきますよね。

シマジ そう、そう。しかし清水さんが矢野ちゃんのところに送ったのは、果たしておれにとって、幸せだったのか不幸だったのか・・・。

矢野 今東光ファンには真実を知る権利がありますからね。

シマジさんが書いた「和尚前白」がインターネット上で『今東光語録』として箴言集のように扱われているんです。ところがわたしのような今東光研究者からみますと、どう考えても大僧正のテリトリー外のテーマも書かれていると、うすうす感じていたんです。

清水さんから送られてきた膨大な速記録を読んでいましたら、今先生自ら「『和尚前白』って何のことだ?」と訊いている。するとシマジさんが「ぼくが先生の代わりに書いているリードです」というやりとりを発見したんです。

立木 偉い! 川砂のなかから砂金を探すのに近い発見だ。

セオ 矢野さんは雑誌編集者というよりも新聞記者タイプですね。細かくて鋭い。

矢野 今日はこの話になるかと思いまして、そのときシマジさんにインタビューした『慧相』を持ってきました。抜粋して読み上げますね。

---ずばり聞きますが、「和尚前白」は大僧正が書いたものなんでしょうか。

島地: 今日はすべて告白しよう。約束したので言いましょう。あれは、全部、僕が書きました。しかし、よく分かったねぇ。

---というのも実は清水さんから戴いた「速記録」に「例の前白に、ぼくが先生のかわりに書いておいたんですけど」(速記録第38巻145頁)という記述がありました。また「前白って何だよ?」と大僧正が質問されて、島地さんたちが「リードです」(速記録35巻10頁)と応じるやりとりも記録されてまして・・・。

島地: 読み込んでいるなぁ、矢野君は。

---ただ「速記録」で実際に大僧正が語った回想や時評も、うまくリライトされて、「和尚前白」になっているものもあります。ですから、島地さんによる全くの創作ばかり、とも言い切れない。そこで、今日は同人の湊さんが収集された「和尚前白」をまとめて持ってきましたので、どれが完全に島地さんの創作か教えてくれませんか。

島地: いいとも。(コピーを繰りながら)しかし、よく集めたなぁ。(「和尚前白」を読み進みながら)第1回からオレの文章だな。確かに。このころから、うまいなぁ、オレは。(国連総会の演説を取り上げた回を示して)これも、オレ。高校野球の話---これもオレだなぁ。この回は大僧正の話をまとめたもの。これも---オレじゃないか。ほんとうにもう、大僧正が憑依してるね。いま読んでも、面白い!

セオ まったく反省していないところが凄いですね。

立木 むしろ自分でうまいなんて自慢しているじゃない。