ドラマ『全身編集長』をナマで見る会を終えて

わたしにとって生まれて初めての、おそらくは史上初であろう"サッカー"ならぬ"作家"のパブリックビューイングに、大変大勢の方々にごお集まりいただいたことに驚き、そして感謝いたします。このような特別な形でNHKBSプレミアム『全身編集長』を鑑賞出来たことに身に余る感動を覚え、年甲斐もなく胴震いした一夜でした。

会場のみなさんと一緒にテレビ画面を観ながら、大声をあげて笑い、人知れずそっと涙ぐみ、ユーモアとペーソスがよく絡み合ったサノの演出に脱帽しました。わたしにとって週刊プレイボーイ時代はまさに人生の真夏日だったのですが、再現ドラマを観ているうちに、あの疾風怒濤の日々が昨日のごとく蘇り、熱いものがこみ上げてきたことをここに告白します。やはり人生の悲劇とは「記憶の重荷」なのかもしれません。

現実のわたし以上に格好良く演じてくれた新井浩文さん、今東光大僧正になりきってくれた毒蝮三太夫さん、文豪開高健を純文学的に演じてくれたダンカンさんに賞賛の拍手を送ります。それから、温かいコメントをくださった瀬戸内寂聴さん、伊集院静さんにもこころからの謝意を申し上げます。そして、わたしのためにまた働いてくれたフクダ、ナカジョー、テリー、トモジにも有り難うといいたい。もうこれが最後の仕事だからね。

繰り返しになりますが、3500円もの参加費を払って、しかも夜遅くまで一緒に観賞してくれたみなさまには頭が下がりました。そう、人生は"じかあたり"が大事なのです。みんなでこころをひとつに出来たあの不思議な時間は、何にも代え難いひと時です。あっという間の熱い出会いでしたが、わたしは死ぬまで一生忘れることはないでしょう。有り難うございました。また必ずお会いしましょう。

さて、御礼は終わり。ここからは早速シマジ節に移ることにする。

そもそもパブリックビューイングのアイデアを思いついたのは"天才編集長"セオである。じつをいうと、この再現ドラマは、諧謔と狂気と悲しみの物語になるだろうと踏んでいたので、どうしても独りで観る勇気が湧かず、「セオ、一緒に観てくれないか」と頼んだのだ。すると自他共に認める愛妻家のセオはこういった。

「シマジさん、奥さんと観るべきです。いい罪滅ぼしになるんじゃないでしょうか」

「セオ、バカなことをいうんじゃない。このテレビの話は女房には内緒なんだ」

「えっ! でも奥さんが偶然観ちゃったらどうするんですか?」

「心配することはない。NHKはしゃべりのテンポがのろいといって、女房は民放しか付けない。ましてBSプレミアムなんて、これからはもちろんのこと、これまでにも一度として観たためしはない」

「それならいっそ熱烈なファンを100人ぐらい招待して、スポーツバーでパブリックビューイングをやりませんか? ミツハシにも力を貸してもらいましょう」

「そんなに集まるのか? 夜の10時からだよ。しかもタダじゃないんだろう?」

「大丈夫です。お店なので入場料はもらいますが、いまのシマジさんなら100人ぐらいは簡単でしょう」

そして世界初の"作家"のパブリックビューイングは、大絶賛、大賞賛の"ストーム"に包まれて終了した。お開きの後、満面の笑みを浮かべたセオがこっそりいった。

「シマジさん、今夜はテレビではじめて奥さまにお会い出来ました。やっぱりいたんですね」

「セオ、お前はホントにカワイイ男だね。今夜は有り難う!」

こういいながら、わたしはヒゲズラのセオの唇を早業で奪ってやった。

島地勝彦

【ナマ島地イベント開催後記】
当日お集まりいただいた皆様、お忙しいところ遅くまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。上の文章からも分かるように、本人もご満悦で会場を後にしました。作家が読者と顔を合わせ、あのような親密な雰囲気で笑い合う機会というのはそうはありません。シマジさんは他人の精気を吸い取って生きる"妖怪"のような方ですから、皆さんのおかげで少し栄養を取り過ぎてしまったようです。翌日には早速、メルマガ用の原稿を3本も送りつけてきました。ますます調子づいたシマジさんの活躍を愉しみつつ、機会がありましたらまた"冥途までの暇つぶし"にお付き合いください。最後にちょっと宣伝になりますが、メルマガ購読もその方法のひとつです。(現代ビジネス・ヒノ)