「現在の刑務所は罰を与えるだけで更生する場になっていない」 ホリエモンが語る刑務所からの"社会復帰" 岡本茂樹 × 堀江貴文 【前編】

法改正されたが、運用ルールは厳しかった

堀江: 刑務所なう。』という本にほとんど書いてあるのですが、肝心のところは書けていませんでした。なぜかというと検閲がすごく激しくて、僕が入ったときに長野刑務所の首席矯正処遇官が厳しい人でノートの「たくさげ」はいけないと釘を刺されていました。「たくさげ」ってわかりますか?

刑務所の中で物書きをしていたんですね。そのノートを来た人に渡したりとか、郵送で知り合いに渡したりすることを「宅下げ」と言います。

ノートの宅下げは実際に私信を送るのと同じ効果を持つので、ダメだというようなことを言っていたのですが、実際はOKのところもあったので、「あれ?」と思いました。反抗するとろくなコトがないので、黙ってノートの宅下げしなかったんですが、1年くらい経って、首席処遇官が変わったらメチャクチャ緩くなりました。担当刑務官に事情を話したら、ざっくばらんな人でOKだったんです。

名古屋刑務所であった事件がきっかけになり、2005年に明治時代以来100年ぶりに監獄法が改正されました。その法律は先進的というか、受刑者の人権保護したりと、かなり法律的にはマシになったのですが、中の運用ルールは厳しくなりつつあって。例えば、今の法律では本の差入れの制限なども、原則自由のはずなんですよ。

冊数制限などもないはずなのに、内部ルールで「刑務所の検閲をする人員が足りないから、1人あたりの差し入れは月10冊まで」とか決まっていて。事実上、無限に差し入れできますが、最初の処遇官に「だからといって、何人もの差し入れ人から何十冊も差し入れてもらったりするなよ」と言われたり。適当にごまかしてはいましたが、実際にはそういう恣意的な運用がされていました。

ただ、僕の場合は手紙や面会を通して、Twitterとかメールマガジンで発信し続けたことも要因かもしれませんが、割りとマシなほうで、待遇などもだんだん改善されたと思います。

話は変わりますが、長野は冬、メチャクチャ寒いんですよね。外の温度はマイナス15度くらいで、北海道並に寒い。それなのに、1年目は暖房が入りませんでした。工場には手がかじかんで作業できなくなると困るので、ストーブがありますが、居室にはストーブがありませんでした。1つの舎房に単独室が100部屋くらい、4階まであるので、400人くらい住んでいます。

その真ん中には担当台があって、夜勤がいろいろやっているんですが、そこだけストーブがあり、そこで循環暖房してるっていう体。だから「寒くて死にそう」とずっと手紙に書いていたら、次の年から暖房が極寒期の2週間だけ入ったんです。

「暖房あったんだ。都市伝説か?」と思いました。去年は暖房の試運転をやって、1日だけ温風が吹いてきたと言っていて、「ホントっすか?」みたいな感じだったんですが。2年目は暖房が入り、「今日、暑かったですよね。暖房あるんだ」という感じでした。

1年目は毛布が1枚だけ。65歳以上の高齢者は2枚だけど僕らは1枚だけで、メチャクチャ寒いんです。中にメリヤスっていうトレーナーのようなものを2枚重ねで着て、その上にパジャマを着て、靴下を二重に履いてなんとか眠れるくらいです。2年目からは毛布が2枚になり、暖かくなったので、靴下を脱いでも布団に入れるようになった。そういうのは言ったもん勝ちだなと。高齢者は極寒の中を行進させられるのですが、体調を崩して死んじゃった人がいたりして。

じゃあ、休んで病舎に入れば良いじゃないかと思うかも知れないけど、これは一番最悪なことです。病舎に昼間いると、ただ寝てるだけ。ラジオもつかないし、苦しい拷問みたい。読書もできないから、刑務作業をしていたほうが、まだマシです。

心臓が悪そうなおじいちゃんが死にそうになってたんで、「行かないほうがいいですよ」と休ませたら、そのまま消えて、1ヵ月後くらいに担当者から「どうも亡くなったらしいよ」と聞いて、切ないなと思いました。

大谷: 堀江さんは刑務所の中から書籍も出版されました。担当者が変わって状況が変わったと言うこともお話の中にありましたが、岡本先生、刑務所内における法律の運用ルールの実態についてお話いただけますか?

岡本: 堀江さんが言ったから変わったということはないと思います。いきなりですが、内幕を話します。2006年に法律が変わりましたが、受刑者の人権の尊重が叫ばれるようになり、規則が緩やかになりました。

しかし、矛盾することがあります。受刑者に手紙の発信などの自由が少し増えてくると、逆に受刑者の管理が行いにくくなるんですよね。すると、受刑者の自由の範囲を増やすということは、受刑者が規則に従わなくなるのではないか、意見を言ってくるんじゃないかとか、そういうことを恐れるようになるわけです。

刑務所がいちばん恐れるのは、受刑者が問題を起こしたり、外に出るようなスキャンダルです。法律によって規則が緩くなったと同時に、内部の統制は反比例するように厳しくなっているという現状があります。

でも担当者が代わると、ガラッと変わることがあるんですね。なぜかと言うと、幹部になればなるほど、1年とか2年の周期で変わる。その幹部がいる間は、人間なら誰でもそう思うでしょうが、学校で言うと校長先生と同じようなものですが、自分が上司でいる間は問題を起こしたくないというのが、刑務所の本音。

問題を起こさないように、それなりに厳しい処遇をします。ただハートがある刑務官もいますから、コロコロ変わるということがあるんです。刑務所や年度によっても受刑者の処遇の実態が違うというのが本当の実態ですね。

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