このメルマガで、私は「ニュースの思考法」と題して、26回にわたって連載コラムを書いてきた。それらを加筆修正して11月27日、講談社から『2020年 新聞は生き残れるか』という本にして出版した。そこで今回は、あらためてジャーナリズムやマスコミ、メディアにとって「いま肝心の問題は何か」について、ふりかえってみたい。
新聞やテレビのマスコミにとって、決定的な問題は「状況変化」である。たとえば20年前とは、取り巻く環境が劇的に変わってしまった。変化の中心にあるのはインターネットの普及だ。
ネットが登場したことで何が変わったかといえば、まず普通の人々が情報を発信する手段を得た。日常生活の感想だろうが、政治に対する意見であろうが、言いたいことはいまや何でもネットに書ける。ブログを開設するのはいとも簡単だし、ツイッターもフェイスブックもある。
かつては普通の人が世間に対して意見を発表しようと思えば、新聞や雑誌に投書するとか、個人的にビラやポスターを掲示するくらいしか方法がなかった。書籍として出版しようにも、よほどのチャンスに恵まれなければ不可能だった。だが、いまやネットでの情報発信はそれこそ小学生にだってできる。
次に発信するだけでなく、多様な情報を入手することもできる。しかも、ただで。べつに新聞を購読しなくても、ネットでは新聞が報じる主要なニュースをたとえ要約版であれ、読むことができる。新聞購読者が減っているのは、ネットの普及が大きな理由の一つであるのは間違いない。
だから、普通の人々にとってネットは情報発信のツールであると同時に、情報入手のツールでもある。