内田洋子 第4回 「本読みのシマジも唸る作家・内田洋子の数のレトリックと『私』の観察眼」

島地 勝彦 プロフィール

立木 シマジの金銭感覚はザルだから、若菜さんは不安になったんだな。おれにはその気持ちがよくわかるね。

内田 贅沢がお好きなシマジさんのことですから、上司の方も「もしかしたら」と心配になったかもしれませんね。

シマジ 内田さんまでわたしを疑うのですか。でも内田さんならこの体験を素晴らしい文章で綴ったことでしょうね。

内田 そういえばシマジさんが鹿島茂さんとヴェネツィアに取材旅行したとき、うちの会社ウーノアソシエイツでお世話になっている、小川光生さんがコーディネイトについたでしょう? 小川さんが、シマジさんの豪快さにただただ驚いていましたよ。

立木 それは驚いたんじゃなくって、ただただ呆れていたんじゃないの?

シマジ そうそう。カサノヴァの足跡を訪ねて鹿島さんとヴェネツィアに行ったことがありました。小川君は面白い青年でしたね。内田さんのことを「社長、社長」と言っていましたっけ。

内田 小川さんは、いまはサッカーに夢中ですけど。

シマジ 小川君とは気が合いました。3日間一緒にいて、地元の新聞記者の友達を紹介してもらったりもしました。『PLAYBOY』の元編集長がカサノヴァの取材をしにきたということでインタビューされて翌日の新聞にデカデカ載ったんです。それを持参して今度は鹿島さんとローマに塩野七生さんを訪ねました。

塩野さんに、ヴェネツィアの新聞に載ったんだけどイタリア語はからっきしダメなので訳してください、と頼んだら、塩野さんは呆れた顔をしながらも読んでくれました。きっとカサノヴァのことをわたしが熱く詳しく語ったことが、カサノヴァと同じヴェネツィア出身の新聞記者は面白いと思ったのでしょう。

じっさいわたしは『カサノヴァ回想録』が大好きでしたから、評伝家のように何でも知っていました。