9シーズン目を終えた四国アイランドリーグPlusから、今年は2選手が10月のドラフト会議で指名を受け、NPB行きの夢を叶えた。中日2位の又吉克樹(香川)と、オリックス育成1位の東(あずま)弘明(徳島)である。
東は高卒で徳島入りし、今年が4年目。リーグ在籍1、2年で指名されたケースが多いなか、四国でじっくりと育てられ、NPB選手に成長した。今回はその道のりを紹介する。
「全然指名される手応えはありませんでした。まさか、という感じです」
育成ドラフトのトップを切って、オリックスから指名を受けた。東は実感が沸かなかった。ただ、本人が思う以上にNPB球団は21歳の内野手に目をつけていた。育成ドラフトとはいえ、複数球団が指名を予定していたのだ。
評価されたのは守備力だ。滋賀の八日市南高から徳島入りした当初から守備のうまさには定評があった。自身も現役時代は内野手だった高知の定岡智秋監督(今季限りで退任)は他球団の選手ながら「光るものがある。2、3年かけて鍛えれば、NPBでも1軍で通用する」と目を見張ったほどだ。
ルーキー時代を知る徳島の森山一人コーチは「球際の強さ、柔軟性があった」と明かす。最初の2年間、森山は東に基本動作の習得を徹底させた。指導するうち、その飲み込みの早さには感心させられたという。
「どの選手にも足の運びを右、左と説明するのですが、普通は実際にボールを転がしながらやってみると、すぐにはできない。でも東は頭で理解するとすんなりできたんです」
消化・吸収が早ければ、どんどん新たなものを取り込める。スローイングひとつとっても状況、体の向きによって上から放るべきか、横から投げるべきか。そんな細かなテクニックも身につけていった。「スローイングで悪送球がほとんどない。それが一番の武器」と森山は話す。東も「森山コーチにノックをしてもらって確実性が増しました」と4年間で最も伸びた点に守備をあげた。