東京に訪れる観光客が増えている。東京都の調べによれば、昨年度に東京都を訪れた観光客は年間でのべ5億人弱で、過去最多を記録(平成24年訪都旅行者数等の実態調査結果)。海外からの観光客数も、震災前の水準にもどったという。2020年の東京オリンピック開催が決まり、東京は国内外からますます注目を集めるだろう。
「東京はどんな街か」という全体像は、観光客がまず知りたいことだが、高い場所から街を見下ろせば一目瞭然だ。東京には、そのための展望台がいくつかある。
代表例を古い順にいえば、東京タワー、サンシャイン60、東京都庁、六本木ヒルズ森タワー、そして東京スカイツリーがあるが、高くない場所にもお勧めしたい展望台がある。それが首都高速道路(首都高速)だ。
首都高速は、首都圏の都市部を通る都市高速道路であるが、「走る展望台」でもある。車中から見上げれば、東京タワーや東京スカイツリー、銀座のビル群、六本木ヒルズ、羽田空港旅客ターミナルビルなどが見え、横に向けば、日本橋や池袋、新宿、渋谷、六本木、上野、お台場などの街並みが間近に見える。より高い位置の展望台や、地平からは見えない景色が、首都高速では楽しめるのだ。
首都高速には、分岐線などをふくめて26の路線があるが、その一つである都心環状線を走れば、短時間で東京の全体像がおおよそ把握できる。
都心環状線は、その名の通り、東京都心を周回する環状線であり、放射状に伸びる路線をつなぐロータリーの役目をしている。1周は14・8キロで、JR山手線の1周(34・5キロ)の約半分であり、渋滞がなければ約20分で走ることができるが、ここに東京ならではの景色が凝縮されている。
沿線には、古くからの商業地である日本橋や銀座、日本の中枢機関が建ち並ぶ霞が関や永田町があり、道路は新幹線などの列車が行き交う線路の上も越え、東京タワーのすぐそばも通る。
近代的な高層ビルが建ち並ぶ場所も通るが、江戸城の面影を残す場所も通るので、車中から新旧の景色が楽しめる。浜離宮恩賜庭園や芝公園の緑、春には千鳥ヶ淵の桜も眺められるし、昼と夜で異なる景色も楽しめる。
これほどバラエティー豊かな景色を短時間で楽しめる展望台は、おそらく他にないだろう。