『血液型で分かる なりやすい病気・なりにくい病気』

がん、胃潰瘍、脳梗塞から感染症まで
永田 宏

 しかし第一次世界大戦後に日本にもたらされ、この地に根付き、やがて今日の血液型性格診断へと大きく発展したのです。もちろん科学的根拠はまったくありません。それでも日本ではこれだけ定着しているのですから、むしろ文化的現象のひとつとして捉えるべきでしょう。

 血液型性格診断を愛好しているのは、日本以外では韓国と台湾だけです。先日、中国からの留学生に聞いてみたら、不思議そうな顔をされてしまいました。中国では血液型性格診断そのものが、まったく知られていないらしいのです。

 血液型をめぐる第3の潮流が、この本の主題である「血液型と病気」ないし「血液型病気学」です。血液型と病気の関連性について研究する分野です。もちろん「血液型病気学」という言葉が正式な学術用語として登録されているわけではありません。しかし、何かしらの呼び名を決めておかないと話をしにくいですから、本書では勝手にこれを使わせていただこうと思います。

 血液型病気学はシンプルな仮説からスタートしました。

「そもそも人間にはなぜ4種類の血液型が存在するのか?」

 血液型が発見された直後から、そんな素朴な疑問が生まれました。

 その答えのひとつとして考え出されたのが、血液型は体質や病気と関係しているのではないか、という仮説です。つまり4種類の血液型に応じて、罹りやすい病気と罹りにくい病気があるのではないか、と考えられたのです。

 この仮説の検証は簡単です。ある病気の患者の血液型を調べれば、仮説が正しいかどうかが分かるからです。そのため世紀前半を通して血液型病気学は大いに人気を博しました。しかしその後、紆余曲折があり、1970年代までにはまったく廃れてしまいました。

 ところが世紀に入ってから、予想もしなかった驚くべき新発見が続々となされ、医学界のトピックスのひとつに一躍返り咲いたのです。

 血液型と病気の関係を強く示唆する証拠が次々にあがってきています。もちろんすべての病気が関係しているわけではありません。というよりも、現在までに関係があるとされている病気の数は数えるほどしかありません。しかしそれらは大規模な疫学的研究などによって、世界中で確認されてきたものです。それがここにあげたがんやエコノミー症候群(肺塞栓症)、ピロリ菌の感染などです。他にもいくつかの病気が関係することが示唆されています。

 しかも単に疫学的にそうだったというだけではありません。最先端のゲノム解析や糖鎖医学の研究からも、重要な事実が明るみになってきています。さらには血液型を識別する乳酸菌の開発まで行われているのです。

 この本では病気と血液型の関係を、最新の研究を中心に、分かりやすく解説していきたいと思います。取り上げている研究についてさらに詳しく知りたい場合は、巻末にそれぞれの出典論文を記載しましたので、そちらをご覧ください。

 本書を読み終わる頃には、あなたが今まで血液型に対して抱いてきたイメージが、きっと大きく変わっているに違いありません。血液型をめぐるワンダーランドに、さっそく分け入ってみることにいたしましょう。

著者  永田 宏(ながた・ひろし) 
一九五九年生まれ。長浜バイオ大学教授。八五年、筑波大学大学院理工学研究科修士課程修了。理学修士(筑波大学)、医学博士(東京医科歯科大学)。大手医療機器メーカー、大手通信会社等で医療情報システムの研究に従事した後、鈴鹿医療科学大学教授を経て現職。主な著書に『販売員も知らない医療保険の確率』(光文社ペーパーバックスBusiness)、『命の値段が高すぎる!──医療の貧困』(ちくま新書)、『実はすごい町医者の見つけ方』(講談社)など。
『血液型で分かる
   なりやすい病気・なりにくい病気』

がん、胃潰瘍、脳梗塞から感染症まで

著者:永田 宏

発行年月日:2013/11/20
ページ数:192
シリーズ通巻番号:B1839

定価:本体 800円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)