日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)がまたまた、水面下で、政治家、官僚、学者、マスコミの支持をとりつけようと激しいロビイング合戦を繰り広げている。
直接の引き金は、国土交通省が先月、羽田空港の国際線発着枠の配分で「11対5」とANAに破格の大盤振る舞いをしたことだ。
この発着枠は、1枠が年間50億円を稼ぐと言われるドル箱である。
JALは直後の記者会見で、植木義晴社長が「根拠が不透明。次のステップを考えざるを得ない」と行政訴訟すら厭わない姿勢を見せて見直しを要求し始めた。
再度の意見書提出も含めて、何らかのアクションを月内にも打ち出す公算が高い。
対するANAにとっては、国策救済によって世界有数のエクセレント・カンパニーに生まれ変わったJALが次々と繰り出す運賃の値下げや新型航空機の導入は大変な脅威。大差の発着枠獲得にも「この程度では是正措置として不十分」と1歩も譲らない。
結果として、両社のロビイング合戦は泥沼の様相を帯びている。
しかし、両者は闘う相手を間違えているのではないだろうか。
そもそもの事の発端は、まだ自主再建の道を探っていたJALを破綻処理に追い込んで、民主党政権の政治的パフォーマンス作りに手を貸した航空行政の失敗だ。
今回の発着枠の配分も、民主党政権の業績を潰したい自民党政権の横やりに屈したものに過ぎない。繰り返される理念なき業界への介入は、海外から見れば、自国の2大航空会社のとめどなき優遇策だ。いつ、保護主義批判が沸き起こってもおかしくない。
JAL、ANAはそろそろ、足の引っ張り合いをやめて、見識なき航空・交通行政に立て直しを迫るべきではないだろうか。
今回の発着枠の差別待遇は、昨年末に行われた国内線の発着枠に続くものだ。
国内線では、ANA8に対しJAL3と差がついた。国内線の発着枠は、1枠当たり年間平均で10億円程度稼ぐとされている。