取材/飯塚真紀子
「アメリカの傲慢」について説く論客にインタビューした。米東海岸から世界を見続ける「知の巨人」は、アメリカ、中国、そしてアベノミクスを進める日本を、いったいどう捉えているのか。
—チョムスキー教授はかねてから、金融機関の暴走に対して、警鐘を鳴らしてきました。しかし結局、'08年9月のリーマン・ブラザーズの破綻を契機に金融危機が起こり、たちまちのうちに世界中に拡散しました。日本も多大な影響を受けました。
あれからちょうど5年が経ちましたが、今後とも、メガバンクが破綻するような世界的な金融危機が起こる可能性はあるのでしょうか。
チョムスキー もちろん、再び起きると思います。'08年秋の金融危機に対しては、その場凌ぎの解決策は講じられていますが、根本的な問題は、依然として解決されていないからです。
世界的金融危機の火蓋を切ったアメリカでは、銀行を規制する法案が議会を通過しましたが、ロビイストたちから徐々に骨抜きにされています。『ニューヨーク・タイムズ』によると、ロビイストたちが、金融規制を弱めるために、法案の一部を書き換えさせたそうです。このようなことは、ワシントンでは日常的に起きています。
選挙という問題もあります。アメリカの選挙は莫大な企業献金に頼っており、議員は退職後の就職先も考えなくてはならないため、企業の要求をのむ行動をしてしまいます。
結果的に、政府が金融機関を規制できなくなっていきます。それどころか、他国の金融機関も規制できなくなってしまい、新たな世界的な金融危機の土壌ができ上がってしまうのです。
—金融危機の再発を防ぐためには、政府が金融機関を規制する必要があるということですか。
チョムスキー もちろんそうです。現在唯一、市場原理だけで動いているのが、金融業界です。だから何度も破綻するのです。市場原理にだけ頼っていたら、どんな業界も破綻は避けられないのです。
実際、金融業界は、ほぼ10年に一度くらいの頻度で、危機に見舞われているではないですか。レーガン、クリントン、ブッシュという歴代の大統領が、規制緩和を推し進めたため、金融危機が起きたのです。