プロ野球特別読み物 小笠原道大よ、谷佳知よ、最初から分かっていたはず 巨人にFAで入っても幸せにはなれないのだよ カネに転んで「故郷」を捨てた男たちの末路

週刊現代 プロフィール

チャンスは与えない

清原同様、今年巨人から戦力外通告を受けた谷佳知(40歳)も、組織の歯車にはなれない男だった。

谷はオリックスとのトレードで、'07年に巨人へ入団して以来、主に代打として安定した成績を収めてきた。今シーズンも、ファームでは打率・324と打ちまくったが、公式戦出場はたった13試合だった。

「いくら下で打っても、フロントにはもはや一軍でチャンスを与える気はなかったんです。若手も育ってきましたし、谷はもう用済みだった。それでも谷は二軍で猛練習していました。選手の間では、バッティングピッチャーの球速が谷のときだけあがっているとまで言われていた。それほど谷の気迫はすごかった。

球団の言うことを素直に聞いて辞めればコーチにはなれたかもしれませんが、谷には現役続行、そして2000本安打への強いこだわりがあった」(前出のデスク)

カネに加えてもう一つ、選手が巨人に惹かれる理由がある。それは他球団とはまったく違う、巨人の「ブランド」だ。'96年に日ハムから巨人に移籍した河野博文(51歳)が言う。

「他球団の選手にとって、巨人は本当にまぶしかった。試合にしても、キャンプにしても、ファンと報道陣の数が比べ物になりませんでしたからね。巨人に移籍してからは、街を歩けば声を掛けられ、サイン会のギャラも一気に5~6倍になりました。

そして何といっても、優勝できるというのは大きい。プロ野球選手になるようなやつは、みんな負けず嫌い。勝てるチームに行きたいと思うもんですよ」

最初は、その熱狂のなかに身を置く外様選手たちのモチベーションは上がる。しかし少しでも成績が落ちると、待っているのはメディアからのバッシングと、フロントの冷たい対応だ。そしてやがて、「ここには俺の居場所はなかった」と気づく。しかしそのときにはもう、戻れる「故郷」はない。

「それでもやはり杉内、村田のように巨人を選ぶ選手が出てくる。今シーズン活躍した村田はまだ大丈夫でしょうが、不調だった杉内は、すでに巨人の冷たさを感じ始めていると思います」(前出のデスク)

中日を戦力外になった井端へ、早くも触手をのばす巨人。悲劇がまた繰り返されようとしている。

(文中一部敬称略)

「週刊現代」2013年11月23日号より